これは、BBCの製作したドキュメント・ドラマである。
ドキュメント・ドラマとは、一般にフィクションを多く盛り込みがちな史劇ではなく、歴史の再現を主眼においた史劇、ドラマであると解釈される。
ハンニバルは紀元前三世紀のポエニ戦争の英雄として有名であり、
これまでもたびたび彼の逸話は映画化されてきた。
2008年にも、ヴィン・ディーゼル主演で「Hannibal the Conpuerer」として
映画化される予定である。
本作品はドラマであるが故に予算規模が小さかったのだろう。ハリウッドの大作映画はもとより、ヨーロッパ製のTVムーヴィーよりも”ショボイ”と思ってしまうところが見受けられる。
ただし、この作品で注目すべきは、作品を作るうえで歴史の再現に主眼を置いているというところにある。ハンニバルの弟マハルバル、”ローマの盾”ファビウス、そして最大のライバルであるスキピオ・アフリカヌスなど、第二次ポエニ戦争の主人公達はきちんと網羅され、歴史的に正しく描かれている。
また、装備品などの史的考証の高さという点でも第一級である。
元来、ローマ兵は共和政期だろうが帝政末期だろうがお構い無しに「トラヤヌスの円柱」にある格好をさせられてきたが、本作においてはそのようなことは無い。
ハスタティはモンティフォルノ型兜と薄い銅板を付け、トリアリィは長槍を持ち、コリント・エトルリア型兜をつけ、ウェリテは投げやりを持ち、動物の皮をかぶっている、と新紀元社から発売されている、オスプレイシリーズで描かれた姿そのまま、即ちきちんと歴史的に”正しい”格好をしている。
私にカルタゴ軍の知識がないので彼らに言及できないのは残念だが、そこは、これを手に取った方々自身の目で確認してもらいたい。
塩野七生の「ローマ人の物語」のファンなどは、活字で描かれた場面をこの目で見ることができる、というのも大きな楽しみの一つとなってくるだろう。
これまでのハリウッド製その他のローマ史劇を、楽しみながらもどこか違和感を感じてきた人々(主に歴史ファン)にとって、この作品は一つの答えとなることだろう。
尚、星4つとしたのは、私の重要視するポイントである会戦シーンが予算の関係であろうが余り大規模でなく、そこに映画に対するテレビドラマの限界を感じたが故の嘆息であり、決して作品そのものには不満はないことをお断りしておく。