著者の本を何冊も読んでいるが、「健康被害では、疑わしきは罰す」との考えが強すぎて、主張部分のデータや、同じ方向性の専門家の主張を大きく取り上げすぎるきらいはある。
私も近藤論には大方賛成だが、彼が放射線科医であり、放射線治療はOKとする主張には懐疑的にならざるを得ない。
船瀬論にも、そのような部分はある。
そこをフレームアップの如き叩かれ方をされる場合もあり、もっと慎重に書けばいいのにとも思っている次第。
本書では、スウェーデンのプライマリーケア 病気予防の啓蒙活動の普及、子どもの頃から予防教育の徹底、医師以外の医療スタッフの充実、妊婦、高齢者など弱者対策の完備、日帰り手術など、過剰医療の排除
正しい食生活や運動、心身の調和を保てば病気にならない事を、子ども頃から学んでいる点を紹介。
それでいて一人当たりの年間受診率と医療費は、日本13,8回・28万円、スウェーデン2,8回・35万円と、安かろう悪かろうではない。
日本の医療は安すぎて、赤字だとの病院経営者の嘆きも理解できるが、彼らが病院、薬、医者、検査の4大信仰にとりつかれている患者を予防医療に導かず、通院回数を増やす事に躍起になっているのでは、理解は得られない。
メタボ検診では、国保・健保の保険者が、国民に対して強制的に特定健診・特定保健指導・受診奨励ができると法で定められており、健診を被保険者が拒否すれば、国は保健医療費負担の10%増額をしたり、病気になった場合、不行跡に相当するとされ、保険が使えなくなったりする可能性もある。
メタボ検診・健康福祉増進法は、ナチズムに繋がると別のレビューでも書いたが、ではメタボがそんなに予防に優れた基準かと言えば、さにあらず。
日本版メタボの基準を作った松澤裕次(阪大名誉教授)は、自身が教授を務めた大阪大学医学部・第2内科に、メタボ関連の製薬会社から2000〜05年度までの6年間で、8億3808万円寄付金を受け取っている。
また、疾病毎に診断法・治療法が事細かに指示された医療指針をもって、医師は診断・投薬するのだが、そのガイドライン策定作成医に対し、02〜04年度合計で、委員長の前述松澤氏の所属講座に3億150万円、齋藤康千葉大教授の講座に2億7010万円、藤田敏郎・東大教授に1億4780万円、北徹・京大教授に1億2565万円などが、治療薬メーカーから寄付されており(読売新聞08年3月30日)、製薬会社と医師が銭で繋がれ、そうしてできた基準は、男性85cm・女性90cmだが、骨盤が大きい女性もへそ位置で計るもので、患者不在で儲ける側に都合の良い基準となっている。
この基準値が男性よりも女性の方が大きいのは、世界で日本だけだ。
国際糖尿病連合でも日本の基準はおかしいとして、「日本人の腹囲基準は男性が90cm、女性が80cm」と修正を求められている。
腹囲の計測位置の国際的な常識は、肋骨の下と骨盤の上のちょうど中間地点。
ところが、日本はCTで内臓脂肪面積を測定しやすいように一律へその位置で計測している。
このへそ基準では、骨盤の大きい女性の場合、その骨盤サイズまでも反映してしまう。
ちなみにアメリカでは、男性100cm・女性89cmとなっている。
メタボリックシンドロームの構成条件は、
(1)腹囲が基準を超えていること、
(2)それに加えて、軽い糖尿病、軽い高血圧症、軽い脂質異常症のうち、2つ以上を持っていることだ。
軽くない場合はメタボリックシンドロームではない。
その人の場合は、たった1つだけ持っていても、それは糖尿病であったり高血圧症や脂質異常症であったりするので、「れっきとした疾病(病気)」である。
メタボというのは病気ではない。
メタボは“生活習慣の改善を始めたほうがいい”という目安なのだ。
メタボだからといって薬物療法などの治療を始める必要はない。
「メタボだ」と指摘されたら、そのまま放置すると、将来、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)や心血管疾患(狭心症や心筋梗塞など)といった命に関わる重大な疾病を招く可能性が高いので、生活習慣を改善すべきというアドバイスを受けた、と理解すればいい。
メタボは「予防開始の合図」である。
この点をきちんと抑えておきたい。
そんなものに罰則付きで強制をかけるから、ナチズムと同一視するわけである。
これまで日本はあまたの公害病や薬害の被害に遭ってきたが、それらは健康を守るべき厚生省・医師・製薬会社によって起こされ、通産省・産業界の都合を優先して、患者が切り捨てられてきた。
医療界だけではないが、何ごとも自身の判断の機会を放棄して、誰かに任せる事が良い結果には繋がらない。
銭が絡むと、提供者側の常識は、消費者にとっては非常識な面を含む場合もあると、特に健康に関する部分では注意して欲しい。
本書と関連するが、書いてない事について補足する。
“癌”の判断では、日本−上皮内に留まっていても、既に癌の性格を持った細胞が増生していれば癌と診断すべき
欧米―浸潤していなければ癌ではない
と癌の定義自体が異なる。
となれば、統計の発生率、発見率、治療率が異なり、治療率で日本の方が上がるのは当然。
病理的な検査についても、卵巣や膵臓など、外から針などで組織や細胞が取れず、手術中に調べる目的で術中迅速診断を行う場合、病理医は10分ほどで回答を出さねばならず、癌ではないとの報告はプレッシャーがかかってし難い(専門家が揃った施設でも、正答率は85%と言われている)。
又それ以外も含む病理検査でも、標本にするため取得した場所から、悪性の場所を見逃さないように標本を作るのも経験が必要で、それは臨床情報によっても判定は異なり、医療差別構造の中、ベテラン病理医の意見にも左右される=不正確な問題の解消は不可能。
大腸ポリープや子宮頚癌のようにゆっくりと癌化するものでは、どこから癌をとするのか意見が分かれるが、それを根本から全摘出すれば予後に変わりはない(その中に癌が含まれようが無かろうが、残った部分は癌化しない)との考えがあり、予後の患者のQOLの低下が懸念されても切除の方向に向かう。