カーライルは米国に本拠を置く、プライベート・エクイティの代表格です。このプライベート・エクィティというあまり耳慣れないファンドの実態を教えてくれます。ヘッジファンドのように投資し、短期に利益を回収というのでなく、企業に投資して3〜5年間のうちに企業価値を上げて、利益を回収するファンドです。その投資は、現在の経営陣と話し合った上で友好的に行われ、投資後もカーライルが社外取締役などを派遣し、経営への関与、アドバイスも行います。
この本は、カーライルの了承のうえ、トップにインタビューするなど取材しているので、全体がカーライル寄りというかカーライルのPRになっているのが欠点とも言えるでしょう。
ところで、この本を読んで、目からうろこ、驚いたのはMBO(マネージメント・バイアウト)の最近の実情を書いている点だ。
通常、MBOは経営陣による自社株購入などと訳され、経営者が株主から株を買い戻し、非上場となり、実質的にオーナー経営となるのが目的とされている。だが、カーライルが関与するMBOは少し違う。
親会社が、ほかの部門を戦略的に中心としていて、子会社へ追加投資する余裕がないが、実は資金を投入すればその子会社の将来が有望な場合に、カーライルが資金を出して、いったん親会社などから株を買い戻し非上場化する。そして、新たに、現経営陣やカーライルなどが主要株主となり、親会社から独立して、投資、経営を行うのだ(経営陣は、ほぼそのまま)。
いわば、子会社が「親離れ」し、新たな資金を獲得する手段としてMBOと、カーライルを利用するわけだ。
このMBOによって、会社の経営がうまくいき、利益が出れば、再上場などをし、カーライルは持ち株を放出して、莫大な利益を得るという狙いだ。
ただ、経営に失敗した場合はどうなるか?
この本には書いてないが、その場合は、カーライルが、経営陣のすげかえ、もしくは、会社部門の一部の売却(全部の売却?)などで、損失を少なくするように行動するのではないか? この本では、東芝セラミックスなどMBOがうまくいった例が書かれているが、失敗のリスクもまた大きいのではないか。
最近、経済記事でよく聞くMBOの実情を詳しく書いてある点だけでも、この本は読む価値があると思う。