朝ドラを毛嫌いしていた私が、生まれて初めてハマッた一作です。
とにかく脚本が圧倒的に素晴らしい。
つくりもの臭さなどこれっぽっちもないセリフの軽妙さ。エピソードづくりのうまさ。
こんな才能のある脚本家がいるんだと、いつも感心することしきりなのですが、
中でもとりわけ素晴らしかったのが、このBOXに収められている戦時下のエピソード。
つつましく生きる庶民の日常に戦争というものが割り込んできた時、
家庭の中にどんな悲劇がおこり、どんな悲しみがひとびとの胸に去来するものであるかを、
これほど見事に描ききった作品には、なかなかお目にかかれないのではないでしょうか。
まさに名場面名セリフの連続ですが、中でも、
住み慣れた町を離れて、死地へと赴いてゆく人達の後姿の切なさはちょっと忘れ難いもので、思い出すたびに涙がこみあげてくるほどです。
ただ、ひとつはっきり断っておかなければならないのは、
このドラマは、どんな深刻なエピソードであっても、そこには必ずいくばくかの救いが用意されているということです。
それは、どんな逆境にもくじけない主人公糸子の肝の座り具合であったり、
思わずプッと吹き出してしまうようなウィットのきいたセリフのやりとりであったりするわけですが、
どんな過酷な状況を描いても、一定の明るさや骨太のユーモアを決して失わない脚本家の筆の冴えは、まさに特筆に値するものでしょう。
朝ドラというものにどのような価値を求めるかは、人によって違うでしょうが、
この「カーネーション」が、近年のTVドラマの中でも出色のレベルで、人間というものを描き、戦争というものを描ききっているのは間違いのないところでしょう。
朝ドラの水準をはるかに超えた傑作だと声を大にして言いたいですね。