放送開始3日で「このドラマのサントラならハズレなわけがないっ」と即購入決定。“疾走感”という言葉は、アクションやサスペンスもの限定の表現ではないのだなとつくづく思う。走る糸子、躍動する糸子、壁にぶつかり、悩み、それでも必ず突き抜ける糸子。糸ちゃんが回すコマのリズムに乗って、聴きながらどこまでも一緒に走って行きたい。すでに“カーネーション廃人”になっている向きも多いのではないでしょうか(自分だ)。
“劇伴界の時空召喚者”佐藤直紀さんが、だんじりの町・岸和田舞台にふさわしい、たくましい祭囃子を思わせるビートを一方の支柱に、ときにアイルランド民謡調、ときにスパニッシュ、ときにディキシーランド風、ゴスペル調、ウィーンの舞踏会風…と、それはそのまま糸子が駆け抜けた時代、紡ぎ出した時間の多彩さ豊饒さです。
どの曲も、主旋律の間に、潤沢に散りばめられたパーカッションが“心の掛け声”のようで元気百倍。ドラマはこれから暗い悲しい戦争の時代を迎えますが、主題をマイナーに裏返したM-17『涙』→潤むようなストリングスのM-18『とどかぬ夢』をくぐり抜けると、ピアノのきらめきが希望を運ぶM-19『だいじょうぶ、』が待っている。重く沈むだけの物語になるはずがありません。
シャンデリアに艶めくドレスの夢M-20『ボビンのワルツ』の後、泰蔵兄ちゃんに内緒で乗せてもらった倉庫のだんじり神輿のてっぺん。気ぃすんだか?と訊かれ「…」と万感の思いで首を振った名シーンM-21『ほんとはね…』は忘れられない。がらっぱちな女の子のお話だけれど、不思議に暑くるしくなく、秘めた意地としなやかな誇りに、自然とこちらの気持ちも沿って行く。売った買った、食べていかな!のシビアな世界でも、底が温かく人の優しさに満ちている。朝ドラ50年の長い助走が平成日本に開花させた大輪の『カーネーション』、背筋を伸ばして、顔を上げて、根性入れて泣き笑いましょう。