既に他のレビュアーの方が指摘しているように弱点はあります。主人公のレポーター的側面が強調され、一応故郷出身者で父や昔ふった恋人とのつながりがある当事者でもあるのだがその印象が弱い結果、結局誰が主人公なのかわかりにくい点(佐々部監督の次作となる「夕凪の街、桜の国」では物語を追体験する田中麗奈が逃れようのない「当事者」であり、このような弱点は解消されている)、映画館の盛衰とともに浮沈した昭和30年〜40年代の幕間芸人の話と親子の涙の再会を実現しようと周囲が努力する現代の話をつなぐ、何故父は娘と会えなかったのか、どんな苦労があったのかの説明が少なすぎる点がそうです。
しかし、全体として「みなと劇場」栄枯盛衰史で、かつ在日韓国人という運命を背負った昭和30年代に遡る家族の絆の物語として一応まとまっており、レポーターを物語の進め役に使った群像劇として本作を割り切って観るなら、各主要登場人物の個性も的確に描かれていて、本作を二兎追うものは一兎も得ずと評するのは酷、というのが私の感想です。たとえそういう弱点があったとしても、昭和30〜40年代の幕間芸人を演じた藤井隆の存在感が圧倒的で、現代の出会いの場面もジーンときます。そして過去と現代の架け橋となる昭和歌謡、特に映画で使われた「いつでも夢を」の素晴らしさの再発見。済州島ロケも効果をあげています。これらの要素だけでも本作は一見の価値あり、と私は思います。観終わって「星よりひそかに、雨よりやさしく♪」と口ずさみたくなる人が多いのではないでしょうか。実際に街の映画館の衰退を見届けるしかなかった者としては、映画館が舞台で、実際の過去の映画の引用を含むというだけで是非観てほしいと思う作品です。