岩波書店から出ている「カント全集」のおまけ。カント研究家の小論集であり、カントじしんの著作は含まれていないのでご用心。また寄稿されている先生方は比較的お若いのではないかと思うのだが、いかがなものであろうか。執筆陣二十二人中戦前生まれは三人だけである。まあ、どうでもいいや。
本書は二部構成で、第一部は「カント入門」で、第二部は「カント哲学」である。それに「資料」と「付録」と「年譜」が附く。すなわち、
第一部 カント入門
1 カントの生涯
2 書簡に見る『純粋理性批判』ならびに「批判哲学」成立史
3 カントと一八世紀啓蒙哲学
4 「ポスト・カント」哲学としてのドイツ観念論
5 新カント学派とカント解釈
6 形而上学的カント解釈
7 カントと分析哲学
8 日本の哲学者はカントをどう見たか
9 カントと現代思想
第二部 カント哲学
1 空間と時間
2 <私>の現存在の分析論としての演繹論
3 自由と道徳法則
4 アンチノミー
5 国民と世界市民の権利と義務
6 カントの美学と目的論の思想
7 批判的啓蒙の歴史の哲学
8 自然科学と自然哲学
9 カントの宗教哲学思想
資料
a 『オプス・ポストゥムム』と批判哲学の間
b カントの講義録
付録
日本におけるカント文献目録 一八九六年‐二〇〇五年
年譜
といった構成である。すでにお気づきであろう。「第一章 カント入門」がまったく「カント入門」になっていないのである。いきなりやや難しいことが書かれている。初学者や私のような一般読者には水準が高く、いきなり手をつけるものではあるまいよ。
基本的にこのシリーズでカントの書籍を求めるのであれば、[4]巻から[11]巻まででよろしいと思われる。「三大批判書」+『プロレゴーメナ』+『人倫の形而上学の基礎づけ』+『たんなる理性の限界内の宗教』+『人倫の形而上学』が揃う。哲学科の学生であれば上の八冊だけで十分ではないだろうか。ただし『宗教』だけはこのシリーズでないと入手が難しいのではないか。
本書はたしかに良質の「カント哲学案内」であるとは思う。しかし難易度は「やや難」かな。