この本は、カントの生き方や人柄を、まるで当時付き合いのあった人のように解説してくれていて、純粋理性批判を始めとする難解なカント哲学の理解を深めるのにとても良い参考書だと思います。カントは、自分自身を含めて、多様で矛盾に満ちている日常の個的人間の中に、人間としての一番本質的なものが隠されていることを見抜き、先ず第一にそれを直視して取り出すことに関心があったのでしょう。そして取り出したものが確かのものなのかどうか、考えられる限りの方法で吟味したのでしょう。この吟味が尋常でないところがものすごいと思うのですが、そのものすごさを支えていたものはこの第一の関心を直視するカントの生き方にあったのだと理解しました。
この本では、本質的なものの取り出し例として、エゴイズム、親切、友情、虚栄心、についてカントの言説を引用しつつ説明をしてくれています。また、カントがどのような人柄であったのかについては、当時交流のあった人の書き残したものなどを引用して説明してくれています。何れも、カント研究者としての著者の知識を背景にした意味深いものに感ぜられ、またカントに対する敬愛がついつい溢れでていて楽しく読み続けることが出来ました。