入門書としてはとてもよくできた本である。
まず、章の題の付け方がよい。
失敗した理由、建築現場、見学ツアー、動揺である。これだけでも失敗した結果カントが何をどのように実際に行い、そして動揺を招いたかがわかってしまう。
内容のまとめかたがとてもよい。
こんなことをいっている。
物があるから、見える。(=実在論的発想)
物をみるから、存在する。(=観念論的発想)
もうこれだけでも哲学上の重要な問題がさらりと述べられている。
また、これは一見見過ごされることだが、見開きページのレイアウトがとてもよいのである。適当な間隔をあけ、引用文がすっきり引用されて読みやすく、重要な事柄は簡潔な表題がふされ、どこで何を読むべきかが明確にされている。
そしてこれが肝心なことだが、とてもよい索引が添えられているのである。このような本は読み捨てにするものではない。だとしたら索引がどんない役立つことか。入門書に索引がついていなかったら、それは入門書ではない。一度よんだら、こんどは入門書は辞書に変わるのである。それに索引がついていなかったら、読者はどうしたらよいのであろうか。
私はこの本をカント辞典としてつかっている。なんど読み返してもよくできているなあ、と感心する。著者のちょったした整理と工夫が読者に多大の利益をもたらすのである。