「足にかいわれ大根がはえて、ベッドにくくりつけられて黄泉の国をさまよい歩く物語」。
あらすじをものすごく大雑把に述べれば、こんな感じになる。
なんとも荒唐無稽だが、実際に読めば感じるのは、常軌を逸したエキセントリックではない。
むしろ見ないふりをしている不安の種が育つような、不気味さがじわりと迫る。
遺作というだけあって、あちこちに死のにおいが撒き散らされている。
病気、病院、看護婦、ベッド、賽の河原…
この視野のせまさが、まるでベッドから起きられない病人が、夢うつつの妄想の中で生み出した物語という印象を受ける。
だんだん、背中にベッドの気配を感じ、「ひとつ積んでは父のため、ふたつ積んでは母のため」という賽の河原の積み歌が聞こえてくるような気がする。