著者には「帰ってきたカワセミ」という前著があるが、当該書は前著の内容も取り込み、また、新たにカワセミの雛の里親体験、産室内の雛の行動が追加されている。カワセミに関する生態の総合的な書物と言えよう。
カワセミの雛の里親体験は、止むを得ない事情があり、経験されたようだ。「2000年6月10日メス親が失踪。そして17日、それまで孤軍奮闘で餌を運んでいたオス親も姿を見せず、巣穴には7羽の雛が取り残された。そのままでは雛が死んでしまう。自然のままに放置すべきなのか。救出を決断!3時間をかけて瀕死の7羽を救出。しかし、弱った雛たちの世話などできるのだろうか?試行錯誤の連続となった保護飼育から放鳥へ。本書は、この里親体験をはじめ、21年間にわたるカワセミ調査の集大成」(当該書の帯より)とある。
全体として、簡潔な説明に、写真やデータが多く挿入されているため、読みやすい本である。カワセミの生態を知るにつれ、一見美しいカワセミにも、生きることは人間にも似た不安定な部分を併せもつこと、子育ても大変な労力の上になされていること、番いにもお互いに直截には知られない一面があることなど、複雑な世界も興味をもって読むことが出来た。入門書としても、十分読みこなせる良書である。
なお、当該書は、市中の書店で新品を購入し、読んだものである。2011年9月、立ち読みに神田(東京)の書店街を歩くと、まだ書棚に置かれている当該書の新品を見かけた。