あれだけ好きだった『ビッグコミック・スピリッツ』に何か違和感を感じ、漫画を全く読まなくなって早10年。しかし全くの偶然からこの『カワイコちゃんを2度見る』の存在を知ったのですが、これは面白かった。本当に面白かった。鬱々とした主人公。アニメキャラ然としてなく、しかしやけに色っぽい女性。疲れたサラリーマン風なのにとてつもなくタフで活力にあふれたおじさん。シュールレアリズム・カフカ的物語設定。しっかり修行したことが分かるデッサン力、ネーム力。「これだ、これだよ。」食い入るように読みました。10年ぶりの昂揚です。
この作者の作風、例えるなら吾妻ひでおの漫画に近いものがあります。傍目から見ても「ああ、おかしくなってしまうんじゃないかな」と心配してしまう自閉性もまた彼に近いかも知れません。例えば吉田戦車など、この福満さんに似たテイストを持つ漫画作家はまだまだあげることが出来ます。画風には徳南晴一郎の影さえあります。私の心の琴線に触れてきたのは当然と言えるでしょう。あまり彼に関する情報はないのですが、本編の短編群を縫って『ガロ』に載った4コマが採録されています。ああ、これだったんだ。やっぱり『ガロ』は90年代でも才能発掘の源泉だったんですね。
傑作揃いですがあえて好きな作品を一つだけあげるなら「根性ナシオヤジ」でしょうか(これが『ど根性ガエル』のパロディだと分かる青年がどれだけ居る事やら)。「鉢植えの恋」もいい。両方ともそこはかとないエロスとなぜか爽やかな読後感が良いんですよね。単純な感性を持つ輩には「何これ」って忌避される様な、こういう異端の漫画を掲載した『ヤンマガ』(別冊ですが)は凄い。ああそうだ。そんなことから今は亡き山田花子の事も思い出しました。彼女のフアンだった人には「僕の宗教に入れよ」は泣けてくる逸品ですよ。他の単行本2冊も早速注文しました。