1951年、木下恵介監督作品。
敗戦後の復興から何とか立ち上がったものの、当時の日本人の暮らしは決して楽なものではなかった。
生活に追われる日々、その中に木下監督は爽やかな笑いをもたらした。
「高峰カルメン」は人気を博し、その後シリーズ化されている。
東京でストリッパーをやっている通称「リリー・カルメン」は、所属する劇場の改修のため休暇をもらい、劇場仲間を連れて故郷に帰ってくる。
しかし何しろ保守的な村のこと、肌もあらわないでたちの二人に一悶着、ニ悶着、それにもめげず地元の事業家が持ち込んだ「凱旋公演(興業)」に出演するのだが、、、。
浅間山懐に抱かれた小さな村「北軽井沢」がカルメンの故郷、別荘地として脚光を浴びる前のお話、浅間山の映像は後の「サウンド・オブ・ミュージック」を連想させるほど雄大で解放感がある。
自分たちは一流芸術家だと主張する彼女たち、好奇の目で見られ、眉をひそめられ、時には蔑まれる二人の女性に注ぐ木下の眼差しは暖かい。
スッタモンダの末、終わってみれば故郷の人々に幸せを残して東京へと帰っていく二人、社会の主役は庶民、寅さんシリーズの原点のような木下の思いが伝わってくる。
まだ貧しかった頃の日本、そこには現代の日本人が忘れ去ったあるいは捨ててしまった原風景とエスプリが、一方それらに対抗するような彼女たちの旺盛な自立心にはその先高度成長に向かう日本人のエネルギーの萌芽が感じられる。
映画の中で盲目のオルガニストによって演奏、歌唱される曲と、カルメンが歌う和製ブルースが象徴的な対比をみせ、戦後の日本が迎えつつあった時代の変化が北軽井沢を舞台に描かれていく。
たとえストリッパー稼業であろうと彼女たちの職業へのプライドは、女性の地位向上のためのオピニオン・リーダーとして多くのことを語らせている。
古いタイプの日本女性として対極的に描かれているオルガニストの妻も、終盤では彼女なりの決意を披歴してくれる。
さまざまな状況を対比させながら、それらに善悪も勝敗もつけず共存させる手際は、人情派木下監督ならでは、、、。
本作は日本初のカラー作品、日本の映画もこうして新たな時代の曙を迎えるのである。