現代宗教のリアルな姿を論じる上での2大キーワードともいうべき、「カルト」と「スピリチュアリティ」。一方は、一般社会のモラルとの摩擦を引き起こしときに犯罪に走るラディカルな宗教形態であり、一方は、宗教的でありながらも宗教を超えた精神世界へと人々を導こうとする、魅惑的な文化現象である。この両者に関して、数人の論者ができるだけ実態を踏まえた上で批判的な考察を行っている論集である。
カルトに関しては、特に脱会信者への調査研究からその問題性を指摘したものが主である。といっても、カルトの宗教としての欠陥や学生・若者への姑息な勧誘に極めて懐疑的な論者もいれば、逆に反カルト運動や脱会カウンセリングが持ってしまう世俗社会の側の暴力性に一定の距離を置こうとする論者もおり、一冊の本としての姿勢は明確ではない。
スピリチュアリティの方はどうかというと、その脱教団的な力学に可能性を見出す者、現代社会における被害者意識の高まりとスピリチュアル文化の興隆に近似性を読み取る者、スピリチュアル・ブームの問題性をまとめ、特にその背景としての格差社会の存在に照らし合わせてこのブームの現況に警鐘を鳴らす者など様々であり、論点はさらに拡散している。
こうした論者ごとの多様なスタンスは、複雑な問題を抱えた事象を複雑なままに分析する、という意味でもよいことなのだろうが、しかしこの著書を通読する上ではやや煩雑な感じが正直した。個人的な感想を言えば、カルト論の方が研究もしっかりしており問題意識もアクチュアルでおもしろく、また本書では「カルト」と「スピリチュアリティ」とが必ずしも相関的に議論されているわけではないので(編者の櫻井氏にはその意志はむろん見られるのだが)、純粋に現代カルト論の共著として編んだ方が、出来がよくなっていたのではないかと思った。