現代社会の問題でもある、核家族を舞台にした物語。
天賦の才に、英才教育を受けてきたバイオリニスト開、その会を弟に持ってしまいコンプレックスに悩み、暴走気味の姉美咲、音大を出たものの会社をリストラされ求職活動中の父直樹、そして学生結婚で自身の音楽家をあきらめ、息子にすべてを託す教育ママな母ひろみ。
ひろみは開に過度の期待をかけ、開はそれに応えることで家族をひとつにつなごうとする。
しかし、ひろみが開に期待をかければかけるほど、そして開がそれに応えるほどに美咲の立場はなくなり、疎外感を色濃くさせてしまう。
直樹は休職中という身で肩身が狭く、家族をまとめる事ができない。
家族の歯車がずれ、どんどんと不協和音を奏でていってしまう。
開はなんとか音楽で家族をもう一度ひとつにしようと奔走する。
出てくる音楽がいいです。そして家族にまつわる音楽がらみのエピソードも情景豊かでとてもいいです。
中学の時に聞きまくったクラシック音楽が脳内プレーヤーで色鮮やかによみがえり、内から五感を刺激してきました。
作者の鬼塚さんの音楽への造詣の深さがそこかしこに溢れています。
開の甘酸っぱい14歳の心理もとても新鮮で最高です。高校生の美咲との微妙なギャップもきちんと描かれていて、大好きな青春もののフレーバーも楽しめました。
表紙を飾るスカイエマさんのイラストもなんとも言えず爽やかです。
とても爽やかな読後感に、しばらく浸れる余韻が心の若返りをさせてくれました。
そんな作品です。