日米のナンバーワン(と世間では思われている)大学の両方を経験したという筆者が、東大(と日本の大学教育)を徹底的に批判し、ハーバード(と米国の大学教育)を徹底的に賛美した本です(一見ハーバードの欠点のようなものも書いているように見えますが、それらは結局結論に反映させていません)。
どんなシステムにも良いところと悪いところの双方がありますが、本書は、米国の価値観でしか物を見ることができないありがちな米国人が、日本の大学の悪いところだけ米国の大学の良いところだけを意図的にピックアップして偏向した結論を導き出したものとしか言いようがありません。我田引水的ながら口だけは達者な人材を育てることには長けている(ハーバードをはじめとする)米国の教育が生み出した「成果」の一つと言えるかもしれません。
例えば、ハーバードビジネススクールを優秀な成績で卒業して投資銀行に就職し年収10億円以上を得ていた経営者達が米国経済をどうしてきたかや、経営が破綻寸前になり多数の従業員が困窮しても自分達だけは多額のボーナスをなお受け取ろうとしていることなどを見るだけでも、本書が言うような「入学選考でボランティア活動を評価する」とか「平等主義」という言葉もいかにも空虚に響きます。
本書だけで米国の大学教育の「実情」を「知った」読者は、日本のシステムが米国に比して全面的に劣っているものとして捉えてしまうかもしれませんが、私は、筆者と同様に日米トップクラス(ハーバードは必ずしもナンバーワンではなくトップグループの一つという程度です)の大学と大学院を卒業した者として、180度逆の主張が可能であると申し上げておきたいと思います。私も日本の大学にも改善すべき点はあると思いますが、少なくとも米国システムを批判なしに受け入れることは有害無益でしょう。