よくぞ、『
はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話』と同時期に出していただけたものと感謝したい。
『そうまでして〜』は、「はやぶさ」を愛しい我が子のように見つめる川口氏の親心がひしひしと伝わる内容だった。
本書は、より専門的な立ち位置から、科学者としての冷静な視線でプロジェクトを振り返る、つもりが、やはり人間的な情に駆られてしまった氏の揺れる心が表現されている。
たとえばP.120以降、燃料漏れの原因解析に関連しての一節。
> 実際に故障箇所がどんなふうになっているかを見てみたいと痛切に思う。
見えないもの、手の届かないものをあれこれ勝手に想像せずとも、クルマのボンネットを開けてみりゃ一目瞭然じゃないか、とは、まさにそのとおり。だがその陰には、「はやぶさ」が燃え尽きずに戻ってきてくれていれば、ちゃんと目視で調査や分析ができ、「はやぶさ2」以降のミッションに確実に活かせたのに、との痛惜な想いが籠もっている。
「はやぶさ」を喪っていちばん悲しく淋しいのは、他の誰でもない、川口氏自身なのだ。
鮮明なカラー写真や豊富な図によって、あたかもプロジェクトメンバーとして参画しているような追体験ができるのが嬉しい。
接近しつつあるイトカワの写真群を見るとワクワクしてくる。数々の近接写真は、まさに「玉手箱」から現れた奇跡と呼ぶに相応しい。
電波が途絶し、グラフの曲線がストーンと急降下して消失した図は、切なくなる。
スウィングバイの話など、現実には難解な計算が必要だったはずだが、敢えてそれらを排した記述もありがたい。
アメリカの、カネに飽かせた強引な施策にも触れているが、それはそれで勝手に(?)やってくれていい。
とにかく「はやぶさ」は、チームワークを結集し、“slow but steady”着実にミッション・コンプリートした、いかにも日本人らしい輝かしい業績として、永遠に語り継がれていくことだろう。