きっと、この作品を手にするのは谷口ジローの熱烈なファンなので作品の内容については省略。
見開きでほぼA3サイズとなる大型本だ。
過去の名作に新たな命を吹き込むのにこんな方法があるのか、と驚いた。誰が企画したのかわからないが、刊行した双葉社には本当に頭が下がる。いくら双葉社と谷口ジローや関川夏央と付き合いが長いからといって、作家に対する尊敬の念がなければできることではないと思う。
フルカラー化にあたっては、谷口ジローが着色指定を行い「水道デジタル倉庫株式会社」という会社がCGによる彩色作業を行なっている。厳密な意味では谷口ジロー自らの手によるカラー化ではないが、あとがきを読むと彼は細かい注文を出していたようなので(当たり前だなと思う)、実質的には彼の手によるものといっていいのだろう。
谷口ジローはあとがきで、この作品がモノクロからカラーに着色されたことで、どのように物語を読まれるのかが気にかかるとし、続けてその理由を綴っているのだが、この理由には驚いた、というか考えもしなかった。しかし、そう書かれてみると確かにその通りだと思うに至った。
で、カラー化された結果をどう感じたか、をどのように書こうと考えたのだが、結局、これも谷口ジローのあとがきに書かれている文章以上のことが思い浮かばないのでそのまま引用したい。
《淡く緩急がつけられた水墨画のような彩色は思ったよりも美しく、明治という時代の雰囲気がじっくりと伝わってくるような味わいがあり、ゆったりと物語の中に融け込んでゆけそうだった。もしかしたら、もうひとつの『「坊ちゃん」の時代』がカラーリングによって新しく生まれたと言っても良いのかもしれない。》
『「坊ちゃん」の時代』は五部完結だ。二部以降もフルカラー化が企画されているかはわからないが、双葉社がこの企画をマニアックと言い切っているのであれば是非実現して欲しい。(筆者も含めた)谷口ジローのマンガを愛してやまないファンは必ず購入するはずだ。
さらに、現在とは画風の異なる作品、例えば「事件屋稼業」のような所謂劇画(ただし谷口自身そして関川夏央も劇画という言葉を使っていないが)時代の作品をフルカラー化して欲しい。濃い彩色になると思う。そして、両者を比較してみたい。