書き出しがショックだった、ダーウィンのジレンマから始まっているからである。しかし、進化の教科書ではない。単純な生物体の化石が発見されていない時代の彼のジレンマであった。その後、35億年前のシアノバクテリアの化石が発見されたが、その化石が生物体と判断された理由は何だったのだろうか。こんな風にして生物の定義や細胞の説明に入っていくのである。うーん、見事!そして、最初に細胞はなぜ小さいのかを説明する。あまりにも当たり前の事実なので考えてもいなかった!進化にしろスケールの問題にしろ原理原則を外さない記述は心地よい。
細胞膜の章を「コレラ菌」で始める、代謝の章を「アルコール感受性」で始める、呼吸の章を「マラソンマウス」で始める、光合成の章を「生態系の生産者の役割」で始めるなど、始まりの工夫も面白い。図版は正確で美しい。この第一巻は原著の第二部の翻訳で、原著の第一部に当たる三つの章(「生物学を学ぶにあたって」「生命の化学」「マクロ分子と生命の起源」)は翻訳されていない。訳書を読んで、化学式がアメリカの教科書にあまり出て来ないのかと思ったら大間違いで、第一部第2章にはしっかり記述してある(訳書では削除されていますから御注意)。この後、分子生物学関連の部中心に三巻まで出る予定だそうである。
訳者はこの本の読者として(1)教科書にあきたらない高校生、(2)医学・生物学を学び始めた大学生、(3)生物学に関心のある社会人を想定しているが、(4)高校の生物教師にとっても参考になる本である。原本は第ニ部より原著第三部(訳書第2巻)、第三部より原著第四部(訳書第3巻)が面白いのである。先が楽しみ。