カラヴァッジョが描く美術作品のリアリズムに驚き、それゆえその作品群は世界的に人気を博しています。題材も構図もまさしくバロック時代の幕開けとでもいうべき見事な作風が多くの人を魅了してきました。
オールカラー130ページのボリュームでこの異端ともいえる作品を残した画家の生涯と名作の数々に出会えるので関心のある向きは是非。
カラヴァッジョ研究の第1人者である神戸大学大学院人文学研究科准教授・美術史家の宮下規久朗氏による著作ですから、その説明も申し分のない出来栄えと言えるでしょう。
カラヴァッジョの代表作は網羅されてあり、収録された作品の質の高さもさることながら、分かりやすく実に深い内容を盛り込んだ解説が光ります。他の著作もそうですが、作品と作家への深い学識に裏付けられた記述がより一層本書の価値を高めていると考えます。
2001年の彼の展覧会以降、日本の多くの人に認知され、先年はボルゲーゼ美術館所蔵の「洗礼者ヨハネ」が日本に来たこともあり、ますます人気が高まっています。
78ページにはセザンヌが大絶賛したと言われる「キリストの埋葬」が掲載してありました。後のフランスの画家たちに大きな影響を与えた作品で、光も影も構図も表情も全て見事な調和の中に、ダイナミックな動きが感じられる名作です。
カポディモンテ美術館蔵の「キリストの笞打ち」のリアリズムは新しい時代の絵画の姿をナポリの人に知らしめる作品です。
酒を飲んでは喧嘩に明け暮れ、狼藉を働き投獄されるという生き方でした。乱闘の後に殺人を犯して死刑宣告を受けた画家というのも珍しいでしょう。また逃亡の4年間、描いては逃げるという生活の中で残した作品群の素晴らしさと凄み、怖さは比類のないものです。38歳の時、ポルト・エルコレ近くで熱病に倒れて亡くなるまで、光と闇の中に浮かび上がる宗教画に表れる人間の業は彼自身の懺悔の記録のようでもありました。