精神科医がカラヤンの各種伝記や逸話を通じ、カラヤンの精神の奥にある自己愛を分析する。
というと、なんだかすごい本のように聞こえるが、奇書ではあるが良書とは思えない。
筆者は以下の9項目を示しカラヤンの自己愛的な障害を論じる。
1)自己の重要性に関する誇大な感覚。
2)限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
3)自分が特別であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達にしか
理解されない、または関係があるべきだ。と信じている。
4)過剰な賞賛を求める。
5)特権意識、つまり、特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを
理由なく期待する。
6)対人関係で相手を不当に利用する。つまり、自分自身の目的を達成するために他人を
不当に利用する。
7)共感の欠如。他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない。またはそれに気づこうと
しない。
8)しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
9)尊大で傲慢な行動、または態度。
以上について、カラヤンの逸話を一つ一つ検証し、異常ではあるが、社会生活上は破綻して
いないため、障害とはいえないが「自己愛的人格を持つ人」と判定する。
しかし、一体、この本で展開される論理と結論のショボさは何なのであろうか。
このような例など、芸術家の世界ではゴマンとあるではないか。
カラヤンの生誕100年にちなんで作られた本だとしたら、何という奇妙な贈物であろうか。
「ハンマーを持つ人にはすべてがクギに見える」という格言がある。
この精神科医にはすべての人が、患者に見えるのだろう。
カラヤンの芸術について、さらに深く知りたい。芸術の心理的側面を考えたい。
そういういずれの人達に対しても、あまりお勧めはできない。