私は最初に光文社文庫の『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳)を読みました。
その中で文脈からして疑問に感じる箇所がいくつかあり、その確認のために
岩波版を読んでみました。すると非常に明快に色々な箇所の疑問が解けました。
以下、光文社亀山版と岩波米川版とを比較した感想です。
亀山訳には人の名前などロシア文学初心者にとって親切な解説があり、文字や
段落の工夫などでぐんぐん読み進めることができますが、ドストエフスキーの
意図をきちんと読み解くには米川訳は必携。亀山訳で『カラマーゾフ』にはま
った人は是非米山訳も手にとってみられることをお奨めします。
何より岩波文庫1巻の最初についている解説がすばらしい。
高々23頁の短い解説ですが、江川卓や亀山郁夫による色々な解説本と比較し
ても、この米川正夫の解説は非常によくまとまった優れた内容のものです。
色々な新機軸の説を読む前に、まずはこの解説を読まれてはどうでしょうか。
(さらに詳しい解説としては『評伝ドストエフスキー』モチューリスキー、
筑摩書房が定評あり。)
宗教的な背景についてこの岩波の解説よりももっと簡潔概観的なものが必要な
場合は『講談社学術文庫 キリスト教の歴史』小田垣雅也(うち、9章10章)
が参考になります。
欲を言えば、字をもっと大きくして欲しい。
岩波文庫には米川正夫訳で『悪霊』『未成年』『作家の日記』もあるはずですが、
品切れ重版未定のまま、というのはいかにも惜しい気がします。