『カラクリ荘』シリーズは、1巻の「夏(お盆)」、2巻の「初秋(彼岸)」、3巻の「冬(大晦日)」、最終巻である本巻の「春(早春から4月)」と季節感を重視した作風が一つの特徴でした。
1巻、2巻はまさにタイムリーなリリースで臨場感が抜群でした。編集サイドの判断と著者の乗り気が、幾多の困難を乗り越えてそれを実現させたのでしょう。
季節感を味方に付けた前半二巻は文句なしに面白かったと思います。
ただ刊行ペースが息切れした後半二巻は、季節とのシンクロを失ったことと、著者のマンネリ感払底の失敗により、若干の失速は否めません。
それでも、投げっぱなしや、尻切れトンボな終幕が多いライトノベルの中で、主人公太一の成長(他者との文字通りの触れ合い)を軸にして、ちゃんと綺麗に締めくくったことは評価に値します。
本当にこのシリーズは、人とあやかしの温かさや哀切や、どこか懐かしい『カラクリ荘』の情景を、シンプルでいて想像の余地を残す描き方で著してくれていて大好きでした。ミギーさんの柔らかいタッチのイラストもとても作品の魅力づくりに貢献していたと思います。
主人公太一は自分の問題に一区切りつけましたので、他の『カラクリ荘』の住人を主人公に物語を紡ぎ続けていただければと思います。
”人の心がわかりすぎる”レンの苦悩が解消されるのかどうか気にかかりますし、「私の夢は、可愛いケーキ屋さんになることだ」と語った”あやかしを愛する国家公認術者”十遠見の先行きも知りたいので、是非とも続編刊行を希望いたします。ということで評価は甘めに☆5つです。