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16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ロシア語版原典からの初めての邦訳,
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レビュー対象商品: カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1) (文庫)
『カメラ・オブスクーラ』(1933)は、ナボコフが33歳のときにロシア語で書いた小説ですが、これまでの邦訳書である川崎竹一訳『マグダ』(1960)はフランス語訳からの重訳、篠田一士訳『マルゴ』(1967)はナボコフ自らが英訳したバージョンからの訳であり、ロシア語版原典の翻訳は本書が初めてということになります。美しい少女と中年男の関係をめぐって展開される『カメラ・オブスクーラ』は、筋からしてナボコフの代表作『ロリータ』を思わせますが、他にも類似点が少なくなく、1955年に発表される『ロリータ』の原型的小説と言えるでしょう。 『ロリータ』や他の後期作品に比べると、ずいぶん読みやすい作品なので、『青白い炎』や『アーダ』などの難解さに接してナボコフに苦手意識を抱いた人にも、楽しめる内容ではないかと思います。 もっともそれは、熱心なナボコフファンには物足りないといった意味ではありません。緻密な細部の描写や巧妙に運ばれるプロットなどはお手の物で、私はナボコフらしい独特の言い回しに出くわすたびに、「ああ、ナボコフの小説だ」と嬉しくなって、思わず何度もほくそえんでしまいました。
5つ星のうち 3.0
『ロリータ』の前に、ではなく、『ロリータ』の後に,
By Yaginuma (神奈川県相模原市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1) (文庫)
40台後半の妻子ある裕福な中年男クレッチマーは、映画館で案内係をしている16歳の美少女マグダに出会い恋に落ちます。少女の魅力に囚われたクレッチマーは、妻子を捨ててマグダのもとへ身を投げ出しますが、彼女に翻弄されるばかりか、彼女の元の愛人も現われ、破滅への道を転落していきます。ナボコフはその様を巧みなプロットと修辞技法によって冷徹に描写していきますが、それは滑稽にでもなく悲惨にでもなく、どこか現実性が揺らいだ状態においてです。ナボコフの描く生はいつもそうでした。儚く移ろい止まぬ生、カメラ・オブスクーラが結ぶ像のような、チェスの棋譜のような。それでも、それだからこそ彼は生を愛し、真情と詩情を以て生を見詰め、修辞の巧緻を以て生を描くのです。そこにいるのは扇情的で挑発的な小説家ナボコフではなく、沈思的で繊細な詩人ナボコフです。美少女に眩惑された中年男が破滅の道を転落する、というストーリーは明らかに『ロリータ』のそれと相似を成しており、解説にもあるように本作が『ロリータ』の原型であるというのも首肯できるところです。では、数あるナボコフの作品のなかから本書を繙く積極的な理由は何でしょうか。解説は難解なナボコフの世界への入口として、比較的平易な本書を充てることが妥当であると述べていますが、ナボコフの他作品に接したことがなければ、本作品では散見されるだけのナボコフの魅力を見逃してしまう恐れがあります。寧ろ媒介なしに直接にナボコフの魅力に溢れた作品を繙くのが良いのではないでしょうか。修辞の巧緻の極みの『ロリータ』を、深い真情が胸を打つ『ベンドシニスター』を、ロシアの大地に根差した詩情があふれる短篇集を。 何れにせよ、本作品はナボコフの魅力が十全に発揮されたものとは言い難く、未だ練達にはない若き日のナボコフの習作と捉えるのが妥当なのではないでしょうか。
5つ星のうち 5.0
二つのテーマ,
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レビュー対象商品: カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1) (文庫)
「ロリータ」の原型と言われる作品で、非常に修辞的な表現が多い文章で書かれています。絵画評論家で名を成した人物が、十六歳の少女に翻弄され、家庭をも崩壊させてしまう物語です。 タイトルの「カメラ・オブスクーラ」は、写真機の原型になった視覚装置だそうで、小さな穴から取り入れられた光が壁に虚像を結ぶものだとか。 その意味を知るとこの物語のタイトルが「カメラ・オブスクーラ」と言うのは、非常に意味深く思えてきます。 この装置を通して見ている像はあくまで「虚像」です。 終盤に絵画評論家が全盲となり、少女から部屋の説明を聞く場面があります。 そこで少女は実際の色とは異なった色で説明します。 評論家にとっては、少女の説明の是非を判断すべくもありません。 これと似たようなことが、現代社会の多くの場面で起こっているような気がします。 TVの「やらせ」などはその典型で、見る側にとっては、その真実性を知る由もありません。 そう考えると、この作品は単なる少女の魅力に惑わされた中年男の話と言うのとは、ちょっと違ってきます。 そうしたテーマの二重性が、読むものを魅了してやまないのかも知れません。
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