戦前・戦後を生きてきたカメラ屋さんの話をまとめた書。楽しく読ませていただきました。私にとっては断然星5つです。
ちょっと本書の内容とは離れて一言あります。ウツキカメラは商売が立ちいかなくなって店をたたんだ由ですが、その理由に、インターネットによる個人売買を挙げています。カメラを安く売ったら常連以外の人が買い漁って、それが即座にネットで売りに出されていた、というエピソードが本書に書かれています。しかし、私は、中古カメラ店が相次いで店を閉じているのには、上得意だけを優遇する体質が墓穴を掘ったという側面もあると思います。詳細には立ち入りませんが、これは中古カメラひいては古物商売一般に言えることです。売り物の値が世界を一瞬にして巡る今日、そういう商いが通用しなくなってきているということなのでしょう。
念のため、以上はまったく個人的な感懐であって、本書の価値をいささかもおとしめることも、宇津木氏が重ねられてきたご苦労を矮小化することも意図したものではありません。
著者の柳沢氏は、ジャーナリストらしく、宇津木氏の語り口をそのままに引き写すよう努めています。これにも好感が持てます。