元々、この『カムイ外伝〜スガルの島〜編』のエピソードは、1969年にTVアニメーションとして先行発表されました。
更に、それを再編集・再構成して仕上げた劇場版『
カムイ外伝・月日貝の巻【劇場版】 [DVD]』も東宝系で1971年に一般公開されました。
その後、11年を経た1982年には原作者の白土三平さん自身による劇画が小学館の『ビッグコミック』で連載されました。
それを一冊にまとめたのが本書である。
アニメ版も劇画版も、新旧ファンから多くの支持を得てきた作品で、どちらも中々“大人の雰囲気”のある仕上がりとなっている。
原作者による確りと構成されたプロット(あらすじ・登場人物の設定・事件・小道具・世界観)を基に忠実に映像化された最初のTVアニメ版を
更に押し進め昇華させたものが、この劇画版なのであろう。手法は違えどアニメ版も劇画版も“同じ世界観”を共有しているのだ。
しかし、2009年に公開された実写版映画は“全くの別物”であった。
実写版映画は、この同じエピソードを原作としているものの、基本となる本来のストーリーが、何故か“変梃りん”に脚色されてしまっている為、
基のストーリーで大事なシーン(“馬の白い足に魚が群がっている”シーンや、幸運の“亀”の出現シーンが大事!)が抜けていたり、
変更されていたり(“運命の悪戯”を無視したり、半兵衛がカムイを海に突き落とす等)、要らないシーンまでも付け加えられたりしているので、
幾ら出演した俳優が良い演技をした処で、 ストーリーが分かり難いのだ。
特に、原作{劇画&アニメ}に確りと描写されている“(殿様の)馬の白い足に魚が群がっている”シーンは、この物語には“必要不可欠”で、
この重要なシーンの欠落は“致命的”である。(何故、スタッフの誰か一人でも気が付かなかったのだろう? 間抜けとしか言いようがない。)
更にどういう訳か、忍者同士のアクション(特にワイヤーを使用したシーン)が不自然で、海・鳥・鮫等の自然描写のCGにも違和感があり過ぎる。
海や空の色彩感覚も不自然で、かなり問題がある。ロケ地を沖縄にしたことも災いして、画面に南国情緒が介入し“スガルの島”ではなかった。
そして、肝心要の主演の人は“カムイ”ではなかった。顔も体型も声も演技も全然“カムイ”ではない。
映画の冒頭で使用された原作者による主人公カムイの原画と“イメージのギャップ”が余りにもあり過ぎるではないか。
そう、むしろ『カムイ伝(本伝)』の脇役“キギス”にソックリです。(巻末の鼎談に顔のアップが掲載されているので判る。)
残念ながら、主人公“カムイ”の様に抜忍の宿命を背負った“陰のあるクールな美青年役”は、彼には全然似合わないと思いました。
あの実写版映画には、この原作にはある筈の“大人の雰囲気”がないのである。
この原作の劇画版やアニメ版の持つ、厳粛かつ壮大で素晴しい“世界観”のほとんどが、ものの見事に“台無し”となっています。
あの実写化では、原作者の白土三平さん及びアニメを制作された当時のスタッフの方々が、本当に“気の毒”に思います。
きっと、この白土さん原作の劇画やアニメを観ていなかった方達は(話が理解出来ず)もっと“困惑”されたことでしょう。
実写版映画化は所詮“無理”で失敗に終わったようです。
『カムイ外伝』のファンにしてみれば、まともに出来もしない実写版映画化は“ありがた迷惑”の極みでした。
『カムイ外伝〜スガルの島〜』を堪能するのは、この白土三平さん原作の劇画とアニメを鑑賞することで“十分”です。
巻末にある“鼎談”に、あの実写版映画の宣伝に“都合良く”使われてしまった白土三平さんのお言葉がある。
そこで白土三平さんが「初めて生身の、本物のカムイと会ったような気がする。」と仰ったのは、あの実写版映画を観ての感想ではなかった。
それは、主演の役者が極限状態でのロケ撮影でも頑張って役を演じたという趣旨の話をしたことを受けての、正に“労い”の言葉だったのである。
幾らロケで精神的に主人公と同じ様な辛い心境にあったとしても、“労い”の言葉となると、実際にカムイに等しいという捉え方ではないのである。
皮肉にも、この“労い”の言葉が映画の宣伝に使われてしまったことで、白土ファンに誤解を招いてしまったのも事実でした。
あの実写版映画の公開に合わせての出版とはいえ、本書に巻末の鼎談は要らないと思いました。純粋に原作の劇画のみで十分だと思う。
(あるいは、“鼎談”ではなく、『カムイ伝』の歴史等、コラムを載せていただきたかった。)
帯の映画宣伝も必要ありません。表紙になった白土さんによるカムイのオリジナル・イラストは、とても素晴しいのですが、この商品の構成では
余計な部分がマイナスとなり、残念ながら★3つです。本来なら原作の劇画のみの掲載だけで★5つとなる筈なのですが…。本当に残念です。
処で、何故か同じ“全話分収録”の“ムック本”『
カムイ外伝/スガルの島 (My First Big SPECIAL)』のレヴューが混在していますが、そのムック本
の場合、他の本の宣伝が各章の区切りごとに挿まれてはいるものの、純粋に原作の劇画のみを収録しているので、文句なしに★5つ!です。