ON時代の全盛V9巨人と真っ向対決し、対巨人戦歴代2位の51勝を上げている平松投手が、淡々とみずからのプロ野球人生を語る。
東映の森安、西鉄の池永といった歴史の闇に消えていった超大物選手や、中日の星野、巨人のON、堀内、柴田、土井、阪神の村山、藤田平、江夏、田淵といった巨人V9時代の華やかなプロ野球選手たちに対し、優勝争いとは無縁の一球団選手として、もくもくと対決し、実績を上げていく姿はなぜか親しみを感じさせる。
巨人に一位指名を約束されながら、裏切られて大洋に2位指名される、弱小球団に所属することになったことにより、優勝争いとは無縁のプロ生活を送った平松選手だが、悲壮感や悔しさは全く感じられない。「男は自分の与えられた舞台で仕事をするだけ」という男気のようなものが感じられる。
今では少なくなった、高校野球での無理な連投や、プロ生活に入ってからも先発・リリーフとかなり負担の大きい起用をされたせいか、肩の障害に苦しめられ、「ガラスのエース」と呼ばれていたプロ生活後半時代のようすは、その時代の記憶がある大洋ファンであった私にとってはとても印象深い。つまり、「優勝を知らない大洋のファン」「明るい舞台にたったことの無いサラリーマン」にとっては、たまらない一冊です。
それにしても大洋という万年一弱球団に一生身を置きながら、201勝をあげその四分の一以上の勝利がV9全盛の巨人からというのはすごい。一方で王から25本もホームランを打たれたり通算与死球120のセリーグ記録をもっているなど味のある記録もあってほほえましい。
しかし平松選手の代名詞のシュートは社会人の時代に「OBらしき人」が頼みもしないのに教えてくれ、「シュートなんて必要ないが、無視するのは失礼だ。聞くだけ聞いておこうp.15」と半分聞き流していたものを覚えていたものだという、とりあえず人の話は聞いておくのが大切。