これがジャズなのかクラシックなのか、音楽のジャンルは一概にどちらとも言えませんが(両方の要素が混然と交じり合っている気がする)、ひとつ確かなのは、とてもスリリングで魅力的なピアノ音楽だってこと。ぴちぴちと躍動感あふれるピアノの打鍵の縦横無尽、ほとばしる音楽の生きの良さに、思わず浮き浮きしちゃいます。最初の『8つの演奏会用エチュード』の第1曲「前奏曲」の音楽がはじまった瞬間、「おお! これはなんだか、映画『北北西に進路を取れ』のオープニングの音楽を彷彿とさせるではないか」と、のっけからガシッと心を掴まれてしまいましたよ。
ロシアの作曲家ニコライ・カプースチン(1937- )が1984年に作曲した三つの作品をメインに収めた一枚(『スイート・イン・オールド・スタイル』のみ、1977年の作品)。
「前奏曲」「夢」「トッカティーナ」「思い出」「冗談」「パストラール」「間奏曲」「フィナーレ」と続く『8つの演奏会用エチュード』が、わけても素晴らしいですね。聴いている間はアドレナリン出まくりっていうか、めくるめく跳ね回る音楽につい足先が動いてしまう、そんな心躍る楽しさがあります。ライナーノートのジャケットに、作曲者であり演奏者であるカプースチンの写真が載っているのですが、どこぞの国際企業の最高責任者か、あるいはマフィアの大ボスみたいなこわもてする風貌なんですね。このしかつめらしい顔で(失礼!)こーんな軽快、溌剌とした曲を書いているのかって思ったら、ちょっぴりおかしくなってしまった。
『8つの演奏会用エチュード』と『ソナタ・ファンタジー(ピアノ・ソナタ第1番)』の二作品が、1985年録音。残りの『スイート・イン・オールド・スタイル』と『変奏曲』が、1987年録音。いずれも、モスクワにて収録。ピアノの腕も「うわおっ!」と唸るほどの見事さで、とても聴きごたえがあります。