文化人類学的な妥当性や食人史を研究する用途には不適格な内容であるが、単なる知的好奇心の充足と、古典的かつ有名な食人事例の概要を知り、真偽の度合いや、より深く調べたい事件を探す足場としてならば、とても有用でオススメ?の一冊。
特徴としては、遭難による悲劇的な事例、シリアルキラーによる凄惨な事件、文化人類学的な視点による、当時の書簡などから実態を考察するなど、大分類ごとに事例が分けて紹介されているがことだろうか。
また、そういった状況ごとではなく、動機というか目的からの分類もあり、宗教的意味づけを伴う文化、美食の文化、性的猟奇的嗜好、生存のための手段、販売目的、そ複合ケースなど、大分類とは異なる視点での開設もしてあるため、有名な事件や食人文化の歴史を、広く浅く知ることができる。
難点は、シリアルキラーや遭難事例は問題ないが、文化人類学的な当時の書簡に基づく事例紹介で「実は食人文化などなかったのでは?」という論争に関して(おそらく論争前だからだが)一切触れておらず、従来の文化人類学者の研究と同様に、宣教師等の聞き込みや体験談もどきによる書簡からの推測によって、原住民の食人について検討しているなど、事実としての蓋然性や掘り下げが弱いところで、そのまま史実として鵜呑みにすることはできない。
一方で、遭難事例では、日本語文献での解説が少ない事例も紹介されており、注釈付きでならば、貴重な一冊という評価が可能だと思う。個人的には、好奇心を刺激する読み物として面白く、その意味で★4。