面白く読んだが,肉を食べようとすると一瞬ためらうようになった気がする.強烈な副作用.原題は Confessions of a Flesh-Eater で,アメリカでは出版されず,Amazon.com はイギリス版を売っている.主人公 Orlando Crispe は子供の時から肉と料理が好きで,美貌と美しい体を武器に,気難しい親方から料理の奥義を伝えて貰い,やがて独立してオーナーシェフになるが,父親と喧嘩して殺してしまい,死体を捌いて料理に使ってしまう.これを食べた客に父親の興奮が再現し,店は大混乱.そこでロンドンの店をたたんでパリ,ローマと移転するがそこで身に覚えのない殺人容疑で牢獄につながれる.そこから使い魔的存在の双子の兄妹の策略で奇跡的に自由の身になり,今はジュネーヴで繁盛している,と言う話.この話は Heidegger らしい哲学的武装も用意しているが,本質的にはお伽話ではないか.グリム,ペロー,そして日本のかちかち山など,人を食べる話はもともとお伽の世界だし,材料が死ぬ時の気分が料理しても食べる人に伝わるとなると,いよいよお伽話的である.なお,この本の翻訳は極めて優れたものなので,気持がよい.最初に書いた副作用のため一点減点.