イタロ・カルヴィーノといえば、20世紀のイタリア文学の前衛的な幻想作家という印象が強いけれど、昔話の収集と再話をまとめた大部の『イタリア民話集』もまた、この作家の忘れてはならない業績のひとつだと思う。たしか岩波文庫から上下二巻の抄訳版が出ていたはずだが、いまは品切れなんだろうか。
本書には、「カナリア王子」「とりごやの中の王子さま」「太陽のむすめ」「金のたまごをうむカニ」「ナシといっしょに売られた子」「サルの宮殿」「リオンブルーノ」の7篇が収録されている。
たとえば、表題作のなかで、魔法の本のページを前からめくると、人が鳥に変わり、後ろからめくると、鳥が人に変わるという世にも美しいイメージ。いかにもカルヴィーノの好みそうな奇想に感じられて魅力的だ。ストーリーの展開が素朴で大雑把なところもかえって民話らしい味わいがある。
いまは亡き安藤美紀夫のしなやかでやさしい訳文がとても快い。ひらがなと読点はやや多すぎる感じがしたけれど。そして、安野光雅の無国籍風な挿絵が本文にぴったりと寄り添っていることも好ましい。
小学生から大人まで読んで愉しめる良書である。ああ、もっと読みたいなあ、こういう本を。児童書にしては定価もこなれている。さすが福音館文庫。おすすめです。