(以下、作品の結末シーンに関わる記述がございます。未見の方はご注意下さい。)
幸運にも東京の岩波ホールでこの映画を鑑賞することが出来たが、ラストの余りに機械的な連続虐殺シーンの後、荘厳なレクイエ
ムと無音のエンドロールが流れ再び会場に明かりがついた時、自分を含めた観客者ほぼ全員が凍りついていた。観客は帰りのエ
レベータの中、内輪同士ですら誰も口を開こうとしなかった。自分も身内と観に来ていたが衝撃で思考が停止してしまい、会場から
表へ出てもしばらく話すことが出来なかった。映画館に行きこの様な一種異様な空気を体験したのは初めてであり、恐らく生涯忘れ
られない日になると思う。
作品中のあるワンシーンより…ドイツ軍に変わり旧ソ連軍の支配に置かれることになったポーランド。身内を「カティンの森事件」で
殺された一人の女性が彼の為に墓を建てるが、その墓石に刻まれたある文句がきっかけで、彼女は連行される。その取調べ中彼
女が発した一言が今でも脳裏に焼きついている。「ねえ、私たちはどこの国の人なの?」。恐らく旧ソ連軍への非難の言葉というよ
りも、事実上母国を失ったポーランド人のアイデンティティの喪失から自然と口に出た言葉なのだろう。
ちなみに岩波ホールの観客層はほぼ全員が中高年層の方々だった。30代の自分ですら最も若い観客の一人だったかもしれない。
はっきり言って救いは全く無い作品だが、少なくとも自分が作品から得たものは大きかった。是非自分と同世代やより若い世代の
方々にこの作品を観てもらい、事件の衝撃を共通の体験として分かち合いたい、そう思わせてくれたかけがえの無い作品だ。