「愛とあこがれ」というコンセプトの下に樹村さんが選んだ作品集です。『カッコーの娘たち』『40−0』『晴れの日・雨の日・曇りの日』『砂漠の王さま』『夜の少年』『Flight(飛行)』といった作品を収め、和洋それぞれの現代ものやファンタジーが一冊となっている本書は、彼女の作品集の中ではかなりバラエティ豊かだと言えるでしょう。
ですが、諸々の短編はどれも不思議な暖かさや心に染みわたる優しさを持っているという点で共通しており、すっきりとした読了感をもたらしてくれます。孤独、別離、失恋……と、現実においてしばしば見受けられる暗く重い出来事がはっきりと描かれているにもかかわらず、読み終わるとどこか幸せな気分となるこれらの漫画は、読む者を辛い現実から逃避させるのではなく、それにまっすぐと立ち向かう術を教えてくれる感じがしてきます。特にこの本の最後に収録されている『Flight』は細やかに作られた台詞やしっかりとした物語の構成、主人公の心情をも暗示する情景のどれをとっても素晴らしい秀作で、したいこともなく、いまの生活に閉塞を感じている人すべてに読んで欲しいと思います。無論、他の作品も短編とは思えないほどの力に満ちているので、ぜひ読んでください。ただの文庫一冊が非常に重く感じられるようになるでしょう。
現在の出版予定にはありませんが、樹村さんの復刊本がこれから先にも定期的に発売され続けることを祈ります。