洞窟に調査に入ったアタック班が落盤によって閉じ込められた。水没までのリミットが迫る中、東馬は単身、救助に向かうが…。
ストーリーの大半は、洞窟からの脱出劇。水が流れ込んでくる洞窟という状況を舞台にしたスピード感、パニック…なんていうものが最大の魅力だろう。どちらかというと、「ミステリ」というよりは「冒険小説」と言った趣である。
ただ、全体的に見て不満な部分が多すぎる。まず、序盤はあまりにもバラバラに登場人物が現れて混乱を来す。しかも、その中の数名は殆ど話に絡んでこなかったりして意味が無い。中盤、洞窟に閉じ込められたアタック班と救助に向かった東馬、そして合流してからは、比較的安定してくるのだが、今度は過去の事件が絡みはじめる。この事件の扱いがまた厳しい。犯人の動機であるとかは極めて不思議であるし、終盤、謎解きがされても「かなり偶然に頼った」計画になってしまっていて苦しい。洞窟内に閉じ込められた5人プラス東馬の6人が主な登場人物だというのに、殆ど書き込まれていない人物も多い。
最初にも書いたが、スピード感であるとかは良いものがあるのだから、下手にミステリ要素などをいれずに、洞窟からの脱出を描いた作品でも良かったのではないだろうか? そうであれば、素直に楽しめたかもしれない。…もっとも、それでは江戸川乱歩賞受賞はできなかったかも知れないが。