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私に言わせれば「…ことがある」どころか、それがすべてであって、「生き物」というのも比喩を越えている。多和田の書くものとは、その生き物に振り回されたり、手なづけたり、遊んだり格闘したりの記録であるように見える。
そこでは言葉というものがいかにも気まぐれで身勝手な動物のようだから、ときに駄洒落のようでもあり、どこまで作家は真面目なのだろう、という疑問も感じるのだが、こうしてエッセーを読む限りは本人は大真面目で、しかし書いているときにはおそらく真面目も不真面目も、そんな区別も範疇もないところで、したがって言葉が自分の権利と自由で生きているところで、それと触れあっているのだ。特有の奇妙なおかしさそんなところから来ているような気がする。これを作家固有の感受性と呼ぶのか個性と呼ぶべきか知らないが、変な味だがまた食べたくなる料理のような魅力で、読みたくなるのはほとんど生理的な現象かもしれない。
彼女の創作の舞台裏とでも言うべき、ドイツのアカデミックな世界の情報や、日本では聞くことのない貴重なドイツの作家たちの生活について、
また、自身の指導教授であるジーグリッド・ヴァイゲルの本の紹介、ハイナー・ミュラーに関する修士論文の概要のほか、ドイツ語エッセイの日本語訳、笙野頼子や水村美苗の著作への書評などを含んでいる。
また、短編小説も何本か入っており、多和田の世界がいわば万華鏡のように垣間見える。
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