「かき」
この短編集の中で一番短い作品。
8歳の僕は、モスクワの大通りに父と一緒に立っています。
腹ぺこの僕の目に、向かいのレストランの貼り紙の文字が飛び込んできます。
か・き…僕は、牡蠣を食べたことがないし、どんなものかも知りません。
『とうちゃん、かきってなあに?』父に尋ねます。
『そういう生き物だよ。…海にいるな…』
これを聞いて僕の想像が始まります。
魚と海老のあいのこみたいなもの?調理方法、具材、ソース。
市場で仕入れて、調理場まで運ぶ所も想像します。
この場面の描写が、チェーホフだけではなく、訳者の技量なのでしょう、こちらのお腹もグルグル!
この後、話は二転ほどしますが、9ページの中に滑稽さと哀しさがほんのり優しく詰まっています。
「富籤」
もしかしたら、宝くじが当たっているかも…と夫婦が想像する話。
この話のロシア人名を米国人名にして、ルーブルをドルにして…
レイモンド・カーヴァーの作品として読まされたら、僕は騙されてしまうでしょう。
「カシタンカ」
主人である、さしもの師に付いてお得意先巡りをしているうちに、
迷子になってしまった赤犬の視点で描かれた話。
途中から、少し子供っぽいかなと思ったが、
編集付記にこの話と「かき」「少年たち」は少年少女文学全集のために翻訳された、とあったので納得。
訳者の神西清さんの「チェーホフ序説」は約70ページと読み応えがあるのですが、
チェーホフの短編自体は、20ページ未満の作品が6つと短い作品が多く気楽に読めると思います。