<おことわり>
以下のレビューは、かなり昔に自分が手にした「CASIO EN-200S」の挙動を基準に書いています・・・計算機内に仕込まれた出題プログラムが、昔のもののあまりのヒドさを反省して改善されている可能性も高い(というか、常識的に考えればそれが当然)ですから、現状で手に入る「カシオ百ます計算電卓 EN-200S-N」には、以下の辛口批評はもしかしたら当てはまらないかもしれないことを御承知の上で、「かつてはこんな機種だった」という事実報告としてお読みください。
「脳の善し悪し」を「脳足りん出題者」に評価させる、というブラックジョーク)
昨今の日本人は昔に輪を掛けて「点数」だの「ランク」だのを大喜びしてその数値上昇のために狂奔するようになりました・・・が、そもそもの算定基準そのものが適切でなく、テキトーそのものの問題出してくるオツムの足りない出題者ごときに、自分の「脳力評定」をされることほどキツくて笑えぬ冗談はまたとありません・・・出題者側の資格審査試験もなにもない状況下では「裁く側に回っちまえばもうこっちのもの」となり、相手を高い所から見下ろす立場に身を置くことで、実質的にではなく構造的約束事として自らの相対的優位を確立しようとするこの図式・・・しかもそれが、どんな珍問・愚問でもとにかく眼前に問題ぶらさげて「キミ、これが解けるかね?」と言われると、忠実な犬が遠くに放り投げられたフリスビー追いかけるがごとく、条件反射的にムキになって答を出しにかかる「教育水準の高い日本人」のおかげで、阿呆出題者が誰の指弾を受けることもなく野放しとなり、出題レベル全般の加速度的低落を招くことになるわけです・・・この過程、冷徹に見極めている日本人は、溜息つきたくなるほどに少ないです。
だからこそ、自社製品の売り込みのために「XXX検定」だの「ZZZマスター」だののテストぶちかます高飛車商法が流行るわけです・・・それを「ユーザーのスキルアップのための指標」だと錯覚するオメデタイ消費者が、テストに挑むためにその製品を買い漁ってくれるんだもの、売り手側にとってこんなオイシイ商売も珍しい・・・まぁ、人類全般がもう少し賢くなってしまえば、今は昔の笑い話になるでしょうけど、出題の無茶苦茶さを批判したら「オマエ、自分がバカで正解出せないくせに、問題にケチつけてんじゃねぇ!」と逆ギレしてくる出題者+従順単純回答者集団を平然と敵に回せるほどに自身の知性に自信がある人間は(特に日本人という人種には)と〜っても少ないから、インチキ出題者連中が我が世の春を謳歌できる期間は(少なくともここ東洋圏では)今後ともかなーり長いでしょうけどね。
かく言う自分は、四半世紀以上もの間に渡って日本の大学入試の英語"問題"(not so much questions as PROBLEMS)との職業的付き合いを重ねる身として、ある程度以上の時間幅の中で俯瞰的に「なぁーんも考えてないしょーもない問題出す側」と「何の疑念も持たず全ての問いにムキになって答えようとする側」の(笑い事じゃないけど)笑うしかない関係を怜悧に眺め続けている立場のプロの英語屋ですが、最近の日本ではそうしたアホ問題+インチキ採点ばっか(ネタがなくなると低質クイズ番組に安直に逃げ込むテレビ業界の加勢もあって)加速度的に増殖し、さながら病理現象のようです。
数字は裏切らない・・・が、出題者の裏切りばかりは如何ともし難い)
そんな中でも、単純明快で出題者の主観の混じる余地のない数字を相手の単純計算の反応速度を以て「脳トレ」となすクイズ電卓は、淀んだ世の中を泳ぎ渡るうちにドロドロに疲れた脳味噌のリフレッシュ道具としては、文句なく役立つはず・・・そう思っていたのですが、どうも、機種によっては勝手が違うようです。
この種の「脳トレ電卓」の中で、自分が最初に熱中したのは(このレビュー機の1世代前にあたる)「CASIO EN-200」でした。こちらの機種と比較して「表示されたランダムな数字を暗記し、キーに打ち込む記憶テスト」というやつが付いていた点を除けばクイズパターンは少なく、出題される計算問題の種類はこちら「EN-200S」の方が格段に増えていたので「これはもう買うっきゃない!」と思って飛びついたのですが・・・結局、よく手にする脳トレ機は旧世代の「EN-200」の方になってしまいました。理由は「新世代機EN-200Sの方は、出題の仕方があまりにも幼稚!」で、大人の使用者としては小馬鹿にされているようでカチン!と来るからです。
例えば「百ます足し算」をすると、EN-200Sでは、次のような出題パターンに付き合わねばなりません:
0+0=?
2+0=?
4+0=?
3+0=?
6+0=?
1+0=?
5+0=?
7+0=?
9+0=?
8+0=?
・・・「x + y = ?」の「x」の部分こそ順不同ですが、「y」の方が固定値になっていて、ちっともランダムな変化を示してくれません。これはつまり小学生に「いいかい、ゼロという数はねぇ、たとえどんな数字に足したところで、何の変化も生じないんだよ」と教え諭すためのドリルとして出題されているのでしょう。上の内容から演繹的に推論可能でしょうが敢えて蛇足として付け加えれば、その他の単純ドリル出題パターンは以下のごとしです:
3+7=?
6+7=?
9+7=?
・
・
・
5+8=?
3+8=?
4+8=?
・
・
・
9+1=?
0+1=?
1+1=?
・
・
・
・・・これでは、大人はもちろん、よほど初歩的な計算音痴の小学生以外はものの1ヶ月も経たぬうちに飽きて放り出してしまうはずです。「EN-200S」の出題プログラムを組んだ人は、数字ばかりじゃなく、単純作業の繰り返しに対する人間の快・不快反応の基本的理解を自分の脳味噌にインプットしてから製品作りに携わるべきでしょう・・・この機械はまさに「拷問マシーン」です。その罪深い様態を西欧常識人に伝えるには、上記のような数式の羅列など必要ありません ― 「シジュフォスの石転がし電卓」の一言で事足ります。
日本人で、いやしくも反復鍛錬教材(=drill)作りに携わる教育者を自称(or僭称)する者ならば、「ギリシア神話」や「イソップ物語」ぐらいきちんと読んでおくのが、世のため人のため&自分のため(恥かかずに済む)でしょうね。そういう人が少ないせいで、日本の教育からは「無意味でツマラなくて有害無益な約束事に、文句も言わずひたすら耐え続ける従順なお客さん」が生まれるばかりで、産業界も政界も官僚制度もこぞってそうした「文句を言わない忠実で従順な消費者・有権者・納税者」の上にアグラかき続けてるうちに、競争力を失い腐敗堕落し税制破綻し、その弊害がいよいよ歴然となった時点で失地挽回を図ろうにも、「ダメじゃない努力」の何たるかを知らぬまま大人になっちゃった日本人ばっかの現状じゃぁ、実に困難・・・「クソ面白くもない授業に受動的に耐えるばかりの教育」のツケは ― 個人にも社会にも ― とっても重いのです。
総評)
大人が脳トレマシーンとして使う場合、その出題パターンには大いに問題ありですが、「虫くい計算」・「2桁計算」・「加減乗除カッコつき計算順序特訓問題」等(小学生ならずとも)計算能力向上には確実に役立つチャレンジングな機能がたくさん付いてます。出題アルゴリズムにほんの少し手直しを加えるだけで「迷機」から「名機」に生まれ変わる素質があるのだから、メーカー側も反省して既に改善を施している可能性も高いと思いますが・・・何にせよ買う前にまず店頭で「百ます足し算」を実地検証し、上記レポートにあるような「大人をナメとんのか、ワレ?!」と叫びたくなるような地獄の単調ドリルに付き合わされるか否かを確認してみることをお勧めします・・・もし改善されてないようなら、子供に買い与えてもすぐに飽きてポイ捨てされちゃうこと間違いなしですから、その場合にはお子さんを「勉強ギライ」とか「怠慢」の冤罪で叱り飛ばすようなアホな大人を演じないことを、強くお願いしておきます。