「おいしそうだと思って飲むカクテルのほとんどは、おいしく感じる」、「おいしそうに感じさせる仕事をどれだけできるかが、最後の味づくりの鍵」と著者は語っています。それが嘘でないのは一読してはっきりわかります。この本がそれを全て体現しているからです。わかり易いHowTo、散りばめられた品位の高い美しい写真、映画のワンシーンを眺めているかのような映像的な文章の数々。謙虚でありながらも決して的を外さない正確かつ柔軟な仕事、飲み手がいかにいい時間を過ごせるにはどうしたらよいか、「飲み手」を「読み手」に置き換えても相通じる世界が渾然となりつつ展開されています。
「日本は世界で一番、カクテルらしいカクテルを飲んでいる国ではないか」。導入部で綴られたこの自意識の高さに少し反感を持ったものの、この本には読み手にそれを確信させる力があります。著者と同じ思想と技術を持ったバーテンダーさんがどれだけいるのかわかませんが、読後、そんなお店との出会いを持ちたいと強く願うようになるであろうことは間違いありません。