短編集だがどの挿話もよく練られている。全体としての統一性もちゃんとある。
特に一話は渾身の出来。まったく無駄なし。作者が十回以上書き直したというだけある。ヒロインである盲目の少女ノヴィアが主人公ジークと出会い、対話し、彼の「戦い」を見て、その抱いた葛藤に微かな光が射すまでを素晴らしい説得力で描いている。話の展開、挿話の嵌め込み方、短編のお手本のよう。
ジークを「演出」する設定、小道具、決め台詞はきちんと考え込まれ、かっこいい。少ない台詞で一見冷たい態度に込められた彼の心の熱さ、温かさを的確に教える。ノヴィアとの料理イベントはヒロインとヒーロー双方の魅力を一挙に示す素晴らしい挿話。
ゲスながら(だからこそ?)一話の悪役もステキ。絵に描いたような極悪ぶりに妙なパワーがある。悪人はやはり悪を楽しむヤツでなくては。
不満なのは最終第六話、ノヴィア盲目の理由には、外部要因からではなく内からの、少女自身が抱く心の葛藤を持ってきてほしかったと思う。(第一話でもそんな感じの思わせぶりな台詞をジークは言ってたのに……。)妖精になんとか存在の必然性を与えるためなのだろうか? そんなことをしなくても十分キャラは立ってると思うのだが。友情ばなしも悪くないけど、ちょっとぬるいかな……、と思ってしまった。