“面白い動物行動学の本を読んでみたい”とリクエストした中学2年の愚息に,動物物語でもなく,知識や技術の羅列でもない,生物学的研究のエスプリを平易に紹介する本がないか?と探していて見つけました。あの『生物統計学入門』の著者,早稲田大学の石居進氏の本です。タイトルは翻訳版の科学読み物みたいで感心しかねますが,内容は期待を上回るものでした。
前書きにこう明言されています:
『この本は見たところ,ヒキガエルの話,ことにその行動の話の本ですが,ヒキガエルということも,行動ということも,私が本当に話そうとした目的ではないのです。実は科学の研究の手順とはこいうものですという話がしたかったのです。』
この言葉通り,生物学において仮説検定,実験デザイン,統計学的手法がいかに大切であり,また面白いところであるか,わかりやすい文章で力強く描かれています。フィールドの動物を相手にしているだけに,実験が計画通り行くことも行かないこともあり,そうした試行錯誤も含めて楽しく読むことができます。
逆に,池に向かうカエルの移動軌跡を解析する一節では:
『もし私たちが観察結果を図13のように軌跡だけで表して,それからいろいろと論じていたら,それは科学になっていないか,あるいはなっていたとしてもきわめて幼稚な状態だと言わざるをえません』
などという,手厳しい批判もあります。ルーチン的にデータを集めて,それを解析すれば何かが見えてくるだろう…といったデータ集約的なアプローチとは一線を画する,著者の強い信念が感じられます。
生物科学に関心のある高校生〜大学生にお薦めの本です。できることなら新書版にして沢山の人に読んで欲しいと思います。