今は文化庁長官の河合先生ですが。この本を書かれた当時は、なんとか世間に自分の考えているカウンセリングを広めたいというひたむきなおもいで一杯だったころです。そういう「みずみずしさ」が伝わってくる本です。今はユング心理学の立場から日本の文化や社会問題を考えるという発言が多い河合先生ですが、この本ではロジャ―ズの3原則について丁重に説明したり、初心の者がいかにカウンセリングをクライアントに害を与えないで、やれるかということを、教える為には、何を教えたら良いのか、ということを突き詰めて考えて書かれた本だなと思います。「家出した登校拒否の中学生を自宅に泊めて、本当は、クライアントとはカウンセリングルームでしかあってはいけないとされているのだが、ぼくは一線を超えた、しかしぼくはこのことで新しい日本のカウンセリングを創造しているんだ」と書かれている所は、河合先生のような才能のある人でさえ、知識や技法以前にクライアントと空間や体験を共有することが第1歩なんだ、と知らされた思いで感動的です。