北欧スウェーデン生まれの新進女流ミステリー作家ラーソンが2003年に発表したデビュー作で、権威あるスウェーデン推理作家アカデミーの最優秀賞に輝いた注目の意欲作です。本書のヒロインはまるで作者の分身のような経歴を持つ税法専門弁護士の若き独身女性レベッカ・マーティンソンです。最近のミステリーやハードボイルドの分野には男まさりで気の強いヒロインが多く登場していますが、彼女も先輩達に負けない強烈な行動力の持主です。弁護士事務所の上司が誘う素振りを見せても全然なびかずきっぱりとした態度で拒否する彼女は、どうも恋愛には当分縁が無さそうです。そして不正を決して許さない強い正義感と自分が下した決断を後悔しない強靭な精神力を兼ね備えています。
北の町キールナの教会で、交通事故から奇跡的に生還し甦って有名になった若き説教師が惨殺死体で発見される。首都の弁護士事務所で働くレベッカは懐かしい故郷の衝撃のニュースを聞いて血が騒ぐ。やがて彼女の昔の親友で被害者の姉サンナから助けを求める電話が掛かり、レベッカは仕事を投げ捨てて北へと向う。レベッカは過去に教会で辛い経験をしていて憂鬱だったが、サンナが逮捕されると自ら弁護人となり、昔の祖母の家でサンナの二人の幼い娘の面倒を見る。
推理の面では専門の法律知識を活かして背景を掴み、教会関係者に遠慮無くぶつかり真相に肉迫します。真実を隠すハンナに苛立ち「くそったれ!」と叫ぶ姿に気骨があるなと感じましたが、クライマックスで犯人に追い詰められた時に彼女が見せた俊敏な行動と驚くべき決断には正直度肝を抜かれました。ここまでやるかという賛嘆の念と、厳しく非情ですが彼女は完全に正しいと感じました。隣人の優しい老人シヴィング、身重で頑張る親切な警察官のアンナ警部、嫌味な上司のモーンスは次作にも登場するとの事で、心の傷を癒して復活したレベッカの活躍に大いに期待したいと思います。