デビュー21年目を迎えたU2の通算10枚目のスタジオ・アルバムだ。"新作は初期の頃の彼らに戻ってるよ"。どこからともなくそんな話が耳に入っていたので、今作を聴く前にあらためて既発アルバムを全部聴き返すことにした。初期と後期のライン引きには少々抵抗を感じるが、ボノのボーカルで考えれば、シンプルなサウンドをバックに力強さが前面に出ていた80年代、ハイパー・サウンドの中を泳ぐロック・スターを気取っていた(意図的な)90年代と区別するのがわかりやすいのだろうか。それを前提に今作に耳を傾けると"初期に戻った"と感じるのは、なるほど、と頷ける。しかし、原点回帰とうたってしまうにはあまりに単純すぎるだろう。あたりまえだが、この作品が今ここに在るのは過去の作品があってこそだ。全12曲を楽曲単位で吟味すれば、そこには間違いなく『ボーイ』(80年)も『ヨシュア・トゥリー』(87年)も『アクトン・ベイビー』(91年)も『POP』(97年)の要素も混在している。彼らは決して自分たちの過去を否定することなく、現時点で演りたいことを体現した。その結果、根強いファンの大方が支持する"U2らしいサウンド"になったに過ぎないのだ。
アルバム・タイトルを直訳すれば『置き忘れてはいけないもの』になる。『もの』の解釈は、歌、LOVE、結束力、未来指向……と様々だが、それはリスナー個々が感じたものが正しいだろう。それでも、ジャケット写真が空港ロビーというのは感慨深い。出発と帰着、別れと再会の場であることに変わりはないからだ。