僕はジム・オルークという人の才能のバランスは、メロディ・メイカーやボーカリストとしてよりも、アレンジャーやプロデューサーとしての才能の方に絶対的な強みがあると思っている。(異論は認める。)なので、過去のソロ名義作品を幾つか聴いても星四つ止まりだったのだが、今回は星五つ点けた。その理由はジム自身が語っているように、まずバカラックの残したメロディが改めて素晴らしいからだ。また、個性溢れる意外かつ新鮮なボーカル陣がどの曲もかっちりハマっていて、適材適所の妙を感じさせる。結果的に、メロディとボーカルにおける最良の素材のおかげで、彼の音作りの才能が最強レベルで展開された作品になったように思う。(日本語ボーカルの英語の拙さを嘆くレビューもあるが、逆にこの人はそこにキッチュさを見出してるんでしょう。)
例えば、カーペンターズで有名な一曲目のように普通に何十年か生きてれば誰でも耳タコなメロディを、全く新鮮に聴かせるということは本来相当難しいことだ。各楽器の響きや空間的な味わいも申し分なく、ところどころ挿入されるノイズも含めて、「一音も聞き漏らしたくない」という気にさせてくれる。こういう細心の注意を払われた音が鳴る作品の常として聴く方は緊張感を与えられてしまいがちなんだが、本盤は逆に小春日和のポカポカした静けさや安らぎを感じさせてくれる一枚になってるのが驚異的。なんか、巷に溢れるつまらない自己主張に凝り固まった音楽から離れて、参加した全てのミュージシャンが純粋に良い音楽を奏でる喜びを味わっているかのような、幸せ感の放射も素晴らしい。傑作です。