正直映画以外の音楽映像作品を観てここまで涙したのはこれが始めてだった。
年老いた二人の風体、やや擦れたアートの歌声、全てを懐かしむ様な微笑ましいMCの数々…。
これは超一流のショウなのだと心の片隅で思いつつも込み上げるものを抑え切れなかった。
音楽の魅力に目覚めた中学生の頃、今は亡き親愛なる従兄弟から借りた一枚のレコードが「Bookends」だった。
モノトーンのジャケットに写るポール&アートが何とも印象深く「America」を聴きながら憧れの国に思いを馳せたのを覚えている。
その後赤いカートンに入った二枚組のベストアルバムを買って貰い、名曲の数々を貪り聴いたものだ。「Bridge over troubled water」「Boxer」「Homeward bound」「I am a rock」…どれもお気に入りナンバー達。
時代は流れ81年のセントラルパークでのライヴ盤を聴いた時「American Tune」に心を洗われた。
しかしこの時、懐かしさと共にS&G時代の終焉を感じた気がして一抹の寂しさを覚えた。
兄の様に慕っていた従兄弟はこのライヴの模様を一度も聴く事無くこの世を去った…。
さらに二十数年の時を経てS&Gの事は頭の片隅に消えかかっていたある日…。
二人がまたこうして活動しているニュースすら知らずに、たまたま立ち寄った店で偶然にもこの作品に出会った。
収録曲は嘗ての愛聴曲を全て網羅している上「American Tune」が入っている事で迷わず購入し、結局この日は三度繰り返して観た。
嘗てS&Gと共に青春を過した全ての方々に特にこの作品をお奨めしたい。
昔日のオマージュとして浸るも良し、今の自分の姿を投影してみるも良し。
選曲の素晴らしさは云うに及ばず、収録時の会場の雰囲気が何とも素敵だ。
映像自体はややピントが甘いが、何と云っても音の良さが傑出している。