本書の邦訳は嬉しい誤算ではなかろうか。
米国アマゾンの情報によると、原書は06年に$100超のハードカバー版として登場し、08年春に半額以下のソフトカバー版が出版されている。通常ならば研究者が原著で読むべき学術論文の扱いを受ける書籍であり、こうした書籍が邦訳に至る例は多くはないだろう。
本書で論じられている「オープンイノベーション」は研究領域としては未だ若く、しかも世界中のビジネスの現場での試行錯誤を通じて急速に進化を遂げている現状が幸いしてか、この邦訳により、研究者ではない私たち日本の読者にも最先端の論点を共有することが容易になった。
本書は本文・注釈だけで400ページに及び、読み終えるために幾つかの週末を費やすことが必要であった。効率よく全体像を'みたい方は、日本語版序文、1章及び2章を読んでから、未解決の課題も含めた論点出しを試みている14章を読み、更に興味をお持ちの章に進まれるとよいのではないだろうか。私はオープンソースに言及している5章を特に興味深く読むことができた。読者の視点・課題意識に応じて異なる読み方が可能であろう。
本書は製品開発や知的財産権に携わる実務者のみならず、閉塞感の強まる日本経済のもとで次の一手を日々打ち続けなければならない経営者やその志を共有する方々が、自己との対話を深めるための一助とすることができる貴重な材料であるように思う。
研究者にとっても勿論、企業経営者との論点整理に有効な、原書を補完する補助資料となることだろう。