コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。仙台沖に浮かぶその島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこで人間たちに崇拝されているのは、言葉を話し、未来を予知するというカカシ「優午」だった。しかしある夜、何者かによって優午が「殺害」される。なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか。「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤は、その死の真相に迫っていく。
嘘つきの画家、体重300キロのウサギさん、島の規律として殺人を繰り返す男「桜」。不可思議な登場人物たちの住む島は、不条理に満ちた異様な世界だ。一方、そんな虚構に比するように、現実世界のまがまがしい存在感を放つのが、伊藤の行方を執拗に追う警察官、城山である。本書が、荒唐無稽な絵空事に陥らないのは、こうした虚構と現実とが絶妙なバランスを保持し、せめぎあっているからだ。本格ミステリーの仕掛けもふんだんに盛り込みながら、時に、善悪とは何かという命題をも忍ばせる著者の実力は、ミステリーの果てしない可能性を押し開くものである。(中島正敏)
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196 人中、178人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
伊坂幸太郎は順番に読むべし。,
By キリエ (神奈川県逗子市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮文庫) (文庫)
デビュー作というのは、いろいろな意味で、きわめて興味深い
ものだ。伊坂幸太郎の作品を読んでみようと思ったら、まずは 「オーデュボンの祈り」から読むことをお勧めしたい。 伊坂幸太郎の作品群は、相互にリンクしている。たとえば、A の作品にちらりと出てきた脇役的登場人物が、Bの作品では、 主要な登場人物の一人として登場したり、Aの作品の「事件」 が、Cの作品で話題にのぼったりする。 伊坂幸太郎自身が、「このミステリがすごい! 2004年版」 のインタビュー記事で、「実際、今までの短編と長編はすべて つながっているんですよ」と語っている。 つまり、刊行順に読まないと、その仕掛けに「にやり」とでき ないのだ。これは、読者サービスのようにも思えるが、作家に とっては、一つの作品世界の奥行きを広げる手法にもなり、ま た、「作品を最初から読ませる」戦略ともなる。 ちなみに、代表的な作品を、発行順に並べてみよう。 オーデュボンの祈り 2000年12月 ラッシュライフ 2002年 7月 陽気なギャングが地球を回す 2003年 2月 重力ピエロ 2003年 4月 アヒルと鴨のコインロッカー 2003年11月 チルドレン 2005年 5月 死神の精度 2005年 6月 魔王 2005年10月 もちろん、どの作品から読んでも伊坂ワールドは十分に楽しめ るが、緻密と評される物語構成を味わうには、作者の「罠」に かかってみるのもいいだろう。
12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
不思議な世界,
By
レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮文庫) (文庫)
ちょっとリアルなおとぎ話という感じもするし、ほんのちょっとミステリーのようなとっても不思議な感じがするお話でした。
読み終わったあと、心が温まる良いお話です。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
強い余韻を残す、不思議なミステりー,
By キリ (大阪市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮文庫) (文庫)
初の伊坂作品。
これから先の他の作品を読むためにも デビュー作から…という軽い気持ちでチョイスした。 コンビニ強盗未遂事件を起こした主人公の伊藤がたどり着いた場所は 外部との交流を持たない孤島の荻島。 物語は、伊藤が島を巡りつつ淡々と進む。 伊藤は、島にとっては まさに1世紀半ぶりの【来訪者】なのだ。 前半の途中までは、中々この世界に馴染めずハズレかな…とも思ったが それが後半から、あれ?イイ感じ?…と変化して行った。 殺人を犯しても、何も言われない「桜」 嘘ばかり言う画家「園山」 体重が300キロはあるだろう動けない「ウサギさん」 地面に耳をつけて音を聞く少女「若葉」 足に障害のある「田中」 そして、しゃべるカカシ「優午」 その優午が殺された(?)ところから、ストーリーはぐんぐんと 進み始める。 伊藤のいた現実の世界の現状が、所々に挟まっていて この対比が余計に、荻島の姿を際立たせる。 伊藤の幼馴染の警察官の城山の恐ろしさが 荻島とかけ離れたように 思えて、怖さが増幅される。 前半のゆっくりの進みが、後半への伏線へと繋がり 少しずつ解き明かされて行く。 全てに意味が有り、キッチリと伏線を回収していく様は巧い。 そして島の言い伝えである「この島に足りないもの」 とは一体何なのか? しゃべるカカシだなんて。 そしてそのカカシが殺される? なんて、一種 荒唐無稽にも思えるが この優午が、話の軸になって 違和感を感じなくなってくる。 こともあろうに、映像までが頭に浮かんでくる始末。 読み終えて、最初に思った「ハズレ感」はとうに無く 素直に面白かったと言える。 独特な余韻を強く残した、不思議なミステリーだ。
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