コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。仙台沖に浮かぶその島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこで人間たちに崇拝されているのは、言葉を話し、未来を予知するというカカシ「優午」だった。しかしある夜、何者かによって優午が「殺害」される。なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか。「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤は、その死の真相に迫っていく。
嘘つきの画家、体重300キロのウサギさん、島の規律として殺人を繰り返す男「桜」。不可思議な登場人物たちの住む島は、不条理に満ちた異様な世界だ。一方、そんな虚構に比するように、現実世界のまがまがしい存在感を放つのが、伊藤の行方を執拗に追う警察官、城山である。本書が、荒唐無稽な絵空事に陥らないのは、こうした虚構と現実とが絶妙なバランスを保持し、せめぎあっているからだ。本格ミステリーの仕掛けもふんだんに盛り込みながら、時に、善悪とは何かという命題をも忍ばせる著者の実力は、ミステリーの果てしない可能性を押し開くものである。(中島正敏)
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205 人中、186人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
伊坂幸太郎は順番に読むべし。,
By キリエ (神奈川県逗子市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮文庫) (文庫)
デビュー作というのは、いろいろな意味で、きわめて興味深いものだ。伊坂幸太郎の作品を読んでみようと思ったら、まずは 「オーデュボンの祈り」から読むことをお勧めしたい。 伊坂幸太郎の作品群は、相互にリンクしている。たとえば、A の作品にちらりと出てきた脇役的登場人物が、Bの作品では、 主要な登場人物の一人として登場したり、Aの作品の「事件」 が、Cの作品で話題にのぼったりする。 伊坂幸太郎自身が、「このミステリがすごい! 2004年版」 のインタビュー記事で、「実際、今までの短編と長編はすべて つながっているんですよ」と語っている。 つまり、刊行順に読まないと、その仕掛けに「にやり」とでき ないのだ。これは、読者サービスのようにも思えるが、作家に とっては、一つの作品世界の奥行きを広げる手法にもなり、ま た、「作品を最初から読ませる」戦略ともなる。 ちなみに、代表的な作品を、発行順に並べてみよう。 オーデュボンの祈り 2000年12月 ラッシュライフ 2002年 7月 陽気なギャングが地球を回す 2003年 2月 重力ピエロ 2003年 4月 アヒルと鴨のコインロッカー 2003年11月 チルドレン 2005年 5月 死神の精度 2005年 6月 魔王 2005年10月 もちろん、どの作品から読んでも伊坂ワールドは十分に楽しめ るが、緻密と評される物語構成を味わうには、作者の「罠」に かかってみるのもいいだろう。
8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
技術点より芸術点を重視,
By mandheling77 (東京都港区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部) (単行本)
デビュー作品ということを加味して、技術点より芸術点を重視で読むと有りかと思います(笑)。 外界と接触を断った島、しゃべるカカシなど、 面白いこと考える人だなぁと発想に感心しました。 ここが芸術点ですね。 技術点で言うと、 文章のつながりや比喩が分かりにくくて 「ん?」と読むのが止まってしまう箇所があったり、 「その理屈はさすがに無理矢理過ぎる…」という箇所もありましたが、 まぁ、そこはご愛嬌ということで。 同じ作者の後で書かれた作品は非常に読みやすかったので、 「文章表現力ってデビュー後に劇的に向上するもんだな」 ということを実感した意味でも面白かったです。
30 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
読んでいて楽しい,
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レビュー対象商品: オーデュボンの祈り (新潮文庫) (文庫)
とにかく読んでいて楽しい小説です。メイン舞台となる“荻島”は、ややシュール、ややメルヘンチック、けれども現実的、という独特の世界です。その独特の島に住む人々の考え方や価値観に、チクチクと触発されます。この小説は、普通のミステリとは違って、謎解きや、結末での華麗な整合性を楽しむタイプの作品ではないと思います(そういう一面もありますが)。緻密で本格的なミステリを期待すると肩透かしを喰らうかも知れません。 「こんなミステリは認めない」と異議をあれこれ唱えても、「理由になっていない」と声がして撃ち殺されるだけですので、ここはひとつ、非日常的小旅行を楽しむ感覚で味わってみて下さい。
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