ストーリーとしては極めてシンプル。驚く程の意外な展開はどこにも用意されていない。原作も脚本もそれ程大した事はないように思える。
ただ、石橋凌と國村隼の大袈裟ではない演技が非常に分かりやすく、邦画独特のわざとらしさが非常に少ない。これなら日本人以外にも抵抗無く鑑賞できるだろう。
また、中身は分かってはいるが、ついつい気になってしまう麻袋の存在、石橋蓮司、大杉漣の嫌悪感すら催す異様な存在感は、ストーリーのシンプルさ、石橋、國村のあっさりした演技と奇妙に咬み合っており、映画全体に歪な立体感を持たせており、本作をサイコ・サスペンスではなく、明らかなサイコ・ホラーとして屹立させることに貢献している。
しかし、やはり本作を所謂B級カルト・ホラーに貶めないのは椎名英姫の作り出す恐ろしいまでの狂気と妖気である。クライマックスのシーンはもちろんであるが、台詞も無く動きの少ないシーンにおいてもその一つ一つの細かい動きや、繊細に動くその表情の作り出すなんともいえない空気感に戦慄を覚える。凄い演技だ。
本作はロッテルダムの映画祭で多くの途中退場者を出したとあって、そのスプラッターシーンにばかり眼が行ってしまうのだが、そのシーンに至るまでに椎名が作っている空気感がそのシーンを単純なスプラッターに留めない大きな要因となっているのだろう。
参考までに米版BDの規格を記す。
映像コーデックはMPEG4 AVCであるが、意図なのかマスターが悪いのか、邦画らしい精細さを欠いた映像である。途中の汚れらしい物も消去しておらず、レストアは極めて甘い。
音声はDTS-HDMAとDolby TrueHDの両方が5.0chで収録されている(日本語)。どちらもそれ程精細な印象は受けず、自然なノイズも拾ったままなので、HD化処理は音声面でも甘いと言える。英語もLPCM2.0chで収録あり。字幕の有無は選択できない。PQ,SQともに2.5/5程度。
HD化のメリットはそれ程無いので、本編だけなら国内版DVDでも十分と思われる。ただし米版には特典ディスクが付属しており、コアなファンにはこれが魅力だろう。