モニター用途ではなく鑑賞用であるが,録音の質と再生機器の特性をなかなか良く反映する。
周波数特性は,中低域と高域にピークがあるようだ。高域側,ハイハットの帯域がわずかに上がっている。これが爽快感,透明性,快活さを出す一要因となっている。最低域側は,あまり下まで伸びていないが,十分な帯域を確保している。パイプオルガンでも聴かない限り,不満がでることは少ないだろう。
本機は,ダイレクトダイアフラムマウントを採用している。同方式の製品を他にも使っているが,この方式はアタック感が少しマイルドになる傾向がある。例えば,トライアングルでは,金属同士がぶつかる鋭く硬い感じが抑制される。代わりに,音が拡散していく余韻が奇麗にでる。スピーカーでいうと,リボンツイーターのフワッとした感触に似ている。低域側でも同様の傾向を示す。ドラムやバスマリンバの強力なアタックはやや緩くなる。
CDとSACDでバイオリンを聴き比べてみると,SACDからCDに切り替えたところでざらついた印象を受ける。艶やかさや場の雰囲気といった微小情報の多寡をある程度反映するようだ。一方,鈍感な部分もある。高精度なオーディオシステムでは録音の質が悪くて聴いていられないようなものでも,楽しめるように適当に脚色してくれる。
総合的には,非常に優れた製品だと思う。適度な解像度と演出で,しっかりした音で楽しく聴けるように設計されていると感じる。ただし,最初にも書いたように,録音の質と再生機器の特性を反映するので,組み合わせによって大幅に評価が変わる可能性がある。特に変化量が大きいのは以下の2点。
1)中低域の質感……量感,締まり方(膨らみ方)がかなり変わる
2)高域の強さ(鋭さ)……f特のピークがかぶると,うるさく(シャリシャリ)感じる
ほかにも,ボーカル帯域の抜けの良さは,録音によってかなり変動する。
これ以上の高精度再生を目指すと,録音の質がモロに出てきて,楽しめなくなる音源が増えてくるだろう。高品位なシステムで聴いた時に欠点が露呈するような録音では,どこかしらに不満点が出てきてしまうことが多い。それくらいの性能がある。こういったことから考えるに,一般的な鑑賞用としては上限の性能ではないだろうか。