ボリショイ劇場の清掃員アンドレイは、以前は超一流の指揮者だった。
国によるユダヤ人団員排斥運動に抵抗した為にマエストロの座から引きずり降ろされ、
アルコール依存症になり、かつての栄光とは程遠い日々を過ごしている。
それでも音楽への愛は喪えない。そんな彼に起死回生のチャンスが訪れる。
パリでの上演に彼が選んだソリスト、アンヌ=マリー・ジャケとは誰なのか?
笑えて泣けて考えさせられるという、私が一番好きなタイプの映画です。
特に体制崩壊後の滅茶苦茶な無秩序さは、笑った後でじわじわと実感が湧きます。
なんたって偽造パスポートを空港のロビーで作っちゃうんですよ? 流れ作業で。
パリ公演のリハより、外貨獲得の為の密輸やアルバイトを優先してるし。
演奏前にギャラを支払え、と殺気立って劇場側のスタッフを締め上げるし。
共産党時代の幻を必死で追い続ける人物には『グッバイ!レーニン』を思い出しました。
作品の鍵になるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は勿論のこと、
パリに来た団員たちが酔いどれて歌う「オ シャンゼリゼ」や、
地下鉄の車内で踊りまくる時に流れる「剣の舞」など、どれも耳に楽しく美しく、
人間は言葉では争うけれども音楽では争えない、と改めて思いました。